2022年06月24日

【おすすめ本】隈元信二『探訪 ローカル番組の作り手たち』―作り手動かす熱き思い 民放局探訪の渾身リポート=河野慎二

 新聞社で30年以上放送界を取材した著者は退職後、北海道から沖縄まで民放各局の番組の作り手を探訪して話を聞き、渾身のリポートを本書にまとめた。「作り手たちがいかに熱き思いに突き動かされているか」という番組制作者の気概がビンビンと伝わってくる。
 著者は山形放送の伊藤清隆取締役報道制作局長を探訪する。山形放送は19年、ドキュメンタリー「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心=`」で民放連賞(テレビ教養最優秀)とJCJ賞を受賞した。
 伊藤は「変わらないのは『戦争をしちゃいけないよ』と伝えること」と語る。その言葉には「反骨」の魂がこもる。
 富山と石川両県の「平成新局」も負けていない。富山の「チューリップテレビ(TUT)」は16年8月、調査報道で市議の政務活動費疑惑をスクープ。市議会に「辞職ドミノ」が広がり、全国にTUTの名を轟かせた。
 石川の「北陸朝日放送(HAB)」は、戦前「関東防空大演習を嗤ふ」という社説で信濃毎日新聞主筆の座を追われた郷土の先達、桐生悠々を題材としたドキュメンタリー番組を18年に放送、「時を超えた(桐生の)警鐘に再び耳を塞ぐとき、嗤われるのは私であり、あなたです」と警告した。番組は、第1回「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」の大賞に輝いた。
 三つの番組に共通するのは、権力に阿らず、忖度せず、真実を追求するという作り手の基本原則を貫いていることだ。
 著者は作り手たちへの探訪を重ねる中で「日本列島には、ジャーナリズム精神がしっかり根付いている」と確信する。その中から、放送と通信が競存≠キる「時代の方向」が見えてくる。(はる書房1650円)
              
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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