2022年06月26日

【今週の風考計】6.26─参院選の争点、「憲法9条」がズタズタにされる!

『わたしの心のレンズ』を読みながら
★今日までの1週間、大石芳野さんの『わたしの心のレンズ─現場の記憶を紡ぐ』(インターナショナル新書)をゆっくり読み進め、大石さんの文章にシンクロしながら、いま日本や世界で起きている出来事に思いをはせた。
★21日には核兵器禁止条約の第1回締約国会議がウィーンで開かれた。だが被爆国である日本の岸田首相は参加せず。22日、参院選告示。23日は沖縄戦で犠牲となった24万1686人の霊を悼む、77年目の「沖縄慰霊の日」。25日は72年前に朝鮮戦争が勃発した日。
★そして今週の30日は、今から63年前、沖縄の宮森小学校に米軍ジェット機が墜落。死者17名(うち児童11名)、負傷者210名(うち児童156名)、小学校3教室に加え近隣の住宅17棟・公民館1棟を全焼、さらに住宅8棟・2教室が半焼する戦後最大の大惨事となった。
★どれもみな「戦争」や軍隊に関連して生じた出来事である。ベトナムや沖縄、広島・長崎など、戦争の悲劇に襲われた地で撮影・取材してきた大石さんは、本書の「あとがき」で、プーチンのウクライナ侵攻への抗議とともに、次のように書いている。
<今の時代、紛争は武力ではなく対話や外交でこそ解決に向かうことが世界の約束ではなかったのか(日本国憲法の前文にもあるように)。…中略…永井隆博士が身をもって切に訴える「平和を」という言葉こそが人間としての願いである>

街頭に響く軍拡への大合唱
★だが日本各地での選挙演説から聞こえてくるのは、憲法9条をズタズタにする軍備拡大の恐ろしい大合唱だ。とりわけ日本維新の会は、軍事費の2倍化、核共有、原子力潜水艦の保有、原発再稼働の促進、さらには改憲への日程を決めろとまで言う。まさに自民党顔負け、自民党をけしかける“突撃隊”に変身した。
★岸田総裁も引き下がるわけにはいかない。敵基地攻撃能力の増強、「防衛費」GDP比2%以上を実現し、憲法に自衛隊をしっかり明記すると約束した。公明党や国民民主党も「防衛費」の増額に同調している。
 メディアの表記も含め、よくも「防衛費」などとゴマカスものだ。まさに他国を攻撃する戦争のための「軍事費」ではないか。
★「戦争を放棄し、陸海空軍その他の戦力を保持しない」とする憲法9条を持つ日本が、軍事費を世界1位のアメリカ(104兆円)、2位の中国(38兆円)につづき、第3位11兆円に増強する必要がどこにあるのか。これこそ憲法違反の「戦争ができる国」へのステップに他ならない。

恐ろしい自衛隊の憲法明記論
★また「自衛隊の憲法明記」論も、大きな落とし穴を用意した欺瞞いっぱいの「9条ズタズタ論」に他ならない。なぜか。
 今から7年前、当時の安倍政権がゴリ押しで安全保障法制を成立させた。この法律で自衛隊は、日本が武力攻撃を受けていなくとも、集団的自衛権を行使して、他国の軍隊と一体となって、外国への攻撃ができるようになっているのだ。
★この自衛隊が、憲法9条2項を新設して明記されれば、後にできた法律は前の法律より優位になるという法の一般原則から、元の9条に謳われる恒久平和主義や戦力を持たないという条文が、ほぼ死文化するのは自明である。
★さらに自衛隊が憲法に明記されると、憲政上の重要な機関に位置づけられ、自衛隊の活動は「公共の福祉」に適う事業として、徴兵制や自衛隊のための土地収用も正当化する根拠に使われる危険がある。あな、恐ろしや。大切な一票を「平和」のために。(2022/6/26)
posted by JCJ at 05:00 | TrackBack(0) | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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