市民グループや労働組合などが集まって年に2回の集会を開催している「かながわ憲法フォーラム」が5月1日、横浜のかながわ労働プラザで開かれた。志田陽子武蔵野美術大学教授が「憲法改正の理路と脱輪、主権者スルー改憲を考える」と題して講演した。
志田氏は、コロナ対策を根拠として緊急事態条項新設を主張する改憲論を批判し、今の憲法は、「公共の福祉」として国にコロナ対策を要求している、とした。
志田氏はこれまでの高等教育無償化や同性婚などを理由として改憲を求める議論を批判した。
改憲の必要のない事柄についての改憲論が出てくる一方、現実の政治では、国民の意思を問わずに憲法の実質的な改変が進んでいる。その例として志田氏は、2015年の安保関連法案や野党が憲法53条に基づいて臨時国会召集を要求した際に、政府・与党側が応じなかったケースをあげた。
また志田氏は憲法95条には、地方公共団体に関する特別法の制定には、その地方で住民投票をしなければならない規定があるにもかかわらず、この条文に基づく住民投票は1950年代以降行われていないと指摘した。
さらに志田氏は、日本では憲法として基本原則を定めた部分と、国会法や公職選挙法などの憲法付属法に分けているが、外国の憲法には詳細を憲法の条文に直接書いてあることが多く、欧米の国では何度も憲法改正しているという議論はその点を混同しているとした。
保坂義久
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年5月25日号
2022年06月28日
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