2022年08月16日

【月刊マスコミ評・新聞】暴力は自由な社会に対する挑戦=山田 明

  参院選投開票2日前、衝撃的な事件が起きた。安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され、亡くなった。卑劣極まるテロである。事件の背景や警備体制など、徹底した捜査・検証を求めたい。気になるのは、事件後「安倍政治」を一方的に礼賛する報道が目立つことだ。選挙への影響も懸念される。

 その中で北海道新聞9日社説「言論封殺する卑劣なテロ」に注目した。安倍氏「自身の保守的・復古的な政治信条を押し通そうとした結果、国民の間の分断が深まった側面は否めない。森友・加計問題、桜を見る会など数々の疑惑も最後まで説明責任を果たさなかった。しかし、そうした「安倍政治」への批判や異議は、あくまでも健全な言論を通じてなされるべきだ。暴力で口を封じようとする行為は自由な社会に対する重大な挑戦である。」
  息苦しさが漂う中で、参院選が終わった。選挙結果は、自民が改選議席の単独過半数を占め大勝した。非改選議席と合わせ、自民・公明で参院でも過半数を維持した。立憲は議席を減らし、維新は衆院選に続き伸長した。昨年の衆院選後の「野党分断」により、自民は1人区で圧勝した。野党は「共闘」しないことには、与党の厚い壁を崩すことなどできない。今回の選挙結果をシビアに検証、評価すべきだ。

  自公と維新・国民の改憲勢力は参院でも3分の2の議席を確保した。憲法9条などの改憲、ウクライナ戦争に便乗した軍拡・「核共有」など、日本の平和を脅かす動きから目が離せない。
 今年は1972年5月の沖縄の本土復帰から50年になる。琉球新報6月27日朝刊は、沖縄で開催されたシンポジウムの宮本憲一氏講演を詳しく伝えている。
  沖縄戦を繰り返すなという主張が沖縄から出ているように、ウクライナ戦争は沖縄の危機を呼び起こす問題だ。今のまま日米軍事ブロック化を強化すれば、沖縄が再び戦場になることは避けがたい。沖縄戦を二度と起こさないという思いは日本人全体の決意でないといけないと、警鐘を鳴らす。
 とかく好戦的なムードに流され、軍事同盟や軍拡に走りがちになるが、「外交を含めた総合的な戦略を構築することこそ、政治が果たすべき役割である」(朝日6月24日社説)。政治とともにメディアも真価が問われている。
 山田 明 
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
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