大阪府市が誘致を目指すIR(カジノを含む統合型リゾート)を巡り、「カジノの是非を問う住民投票」を求めて「直接請求署名運動」が行われた。府内全域を対象とするこの運動は45年ぶり。3月25日〜5月25日の62日間で法定数(有権者の50分の1)を超える約20万筆の署名収集に成功し、住民自治を取り戻す大阪の市民運動は一回り強く大きくなった。
2020年に横浜市と和歌山市で同様の運動が行われたが、大阪ではカジノに反対する市民団体の間で「法定数に達しなければダメージが大きい」と見送られてきた。状況が変わったのは昨年末。IRの誘致場所である大阪湾の人工島「夢洲」(大阪市此花区)の軟弱地盤と土壌汚染の対策に、大阪市が788億円の公金を投入すると発表したのだ。吉村洋文・府知事と松井一郎・大阪市長は「IRは民間投資で税金は使わない」と説明していたにもかかわらずである。カジノ反対団体の一部の人々が「住民投票の直接請求しかない」と反対を押し切る形で立ち上がり、今年2月、「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」が結成された。
このような経緯のため、盤石の態勢で運動がスタートしたわけではない。政党間の歴史的な路線対立から、共産党や立憲民主党など政党色のある組織は協力に消極的。組織決定なしに個人が動き出し、いつの間にか自民党地方議員の後援会の人まで参加する運動に広がった。一人一人が自身の思いで行動した結果、イデオロギーはごちゃ混ぜの草の根20万の塊が出来上がったのだ。
署名総数は21万134筆。府内の各選挙管理委員会の審査で19万2773筆が有効とされ、法定数の14万6509筆を超えた。しかし、吉村知事は「住民投票は必要ない」との見解で、7月29日、召集された臨時府議会は即日採決で否決した。吉村知事は「大阪維新の会」代表、府議会は維新議員が過半数を占める。維新は大阪でこれまでの府政を完全否定して勢力を拡大したのに、与党になれば結局、独善的な態度で市民の声に耳を貸そうとはしない。
横浜市でも住民投票は市議会で否決されたが、署名運動団体は「カジノ反対の市長を誕生させる横浜市民の会」となり、2021年夏の市長選で見事に支援候補を当選させた。大阪でも来年春の知事、大阪市長のダブル選挙に向け、次のステップへの挑戦が始まっている。
幸田泉(フリージャーナリスト )
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年8月25日号
2022年09月13日
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