2022年10月18日

【リレー時評】軍事大国化を急ぐ政府、十分な監視を=𠮷原 功(JCJ代表委員)

 <日本帝国は朝鮮半島を植民地にして極悪非道な行為を重ねた。日本は、禁断の実をアダムに食べさせたイブの国家であり、その贖罪のためにアダム国家である韓国に、日本のすべての物資を収集して捧げなければならない>。旧統一教会の教義で、日本に関連する部分を要約すれば以上のようになろう。この旧統一教会を日本に跋扈させたのが、安倍三代と右派政治家の協力だ。
 安倍元首相射殺事件の容疑者家族が象徴するように、日本の信者=民衆は、「極悪非道の償い」という「教義」に基づく「霊感商法」や「寄付」などで金品を搾り取られてきた。韓国の教団本部に蓄積された膨大な金品は、教団の欧米進出資金となり、日本に還流した一部は日本政治の保守的右翼的潮流を裏から支える活動資金となって貢献した。そして安倍政権下で親教会議員が大臣のときに原理運動、勝共連合、統一教会とさまざまな顔を使い分けて展開してきた教団の負のイメージを隠す「世界平和統一家庭連合」への改称にも成功した。
 安倍元首相銃撃死事件を機に統一教会問題が再浮上し、メディアは競って「空白の30年」を経て統一教会問題を報道し始めた。成果も出ているが、メディアには教団が政府与党の政策にどんな影響を与えているか、もっともっと踏み込んで取材するよう期待したい。
 8月末、23年度予算の概算要求が出揃った。防衛省の概算要求は5・5兆円弱、100項目規模で盛り込まれた金額を示さない「事項要求」を加えると6兆円台半ば。防衛費をNATO並みにGDPの2%に拡大するために走り出そうという驚くべき内容だ。

 実現すれば世界第3位の軍事大国。相手の射程圏外から攻撃するミサイルの量産、無人アセット防衛能力、宇宙・サイバーなど「領域横断的」能力に、弾薬・火薬の確保や部品不足の解消、部隊や補給品を前線に送る「機動展開能力」など臨戦態勢を思わせる項目も溢れている。まさか安倍元首相の「核共有」は想定されてはいまいが。
 岸田首相は内閣改造の5重点分野の筆頭に「防衛力の抜本強化」をあげ、浜田防衛大臣は就任会見で「南西諸島における防衛体制を目に見える形で強化していく」と述べた。「ウクライナ」報道に自衛隊・防衛省関係者が連日登場し主張する防衛力強化に見事に呼応する。 
 沖縄にさらなる負担を強制する姿勢も見逃せない。内閣府の概算要求では沖縄振興予算を大幅減額する一方で、台湾有事を想定し、先島に住民用避難シェルター整備を検討。
 台湾有事でなぜ先島に?自衛隊・米軍の基地が攻撃され、ついで沖縄本島、さらには本土が標的になる。年末には安保関連基本3文書の改訂が行われ、予算に反映されかねない。
 日本が軍事大国に向かうのか、平和憲法にふさわしい国家にむけて努力するのか、メディアは岐路に立たされている。
  𠮷原 功
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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