2022年10月22日
【JCJ沖縄知事選報告】分断はねのけ「オール沖縄」勝利 新基地反対民意揺るがず
全国から注目された沖縄県知事選挙は9月11日に投票が行われ、即日開票の結果、県政与党の「オール沖縄」勢力が支援した現職の玉城デニー氏(62)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=が33万9767票を獲得し、いずれも無所属新人で、前宜野湾市長の佐喜眞淳氏(58)=自民、公明推薦=と前衆院議員の下地幹郎氏(61)を破り、再選を果たした。
投票率は、57.92%と4年前の知事選に比べ、5.32ポイント低下し、過去2番目の低さとなった。
今選挙戦での最大の争点となった辺野古新基地建設を巡り、玉城氏は「軟弱地盤の存在もあり、絶対に完成させることはできない」と明確に反対の立場を強調した。前回も出馬して敗れた佐喜眞氏は、4年前は容認を明確にしなかったが、今回は「容認」の立場を明確にした。下地氏は馬毛島(鹿児島県)への訓練移転により「これ以上は埋め立てない」と訴えるなど、争点は明確となった。
玉城氏の当選は、前回知事選や2019年に実施された県民投票などで示された「辺野古新基地建設反対」という民意を改めて示し、新基地建設に反対してきた玉城県政の継続を多くの県民が信任した形となった。
また、同日に行われた、普天間基地を抱える宜野湾市長選挙では、辺野古移設「容認」を掲げた現職の松川正則氏(68)=自民、公明推薦=が2万9664票を獲得して、新人の仲西春雅氏(61)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=を1万1206票差で破り、再選を果たした。
県知事選では、多くの市町村で玉城氏の得票数が上回ったが、普天間基地を抱える宜野湾市、辺野古を抱える名護市のそれぞれで、佐喜眞氏の得票数が上回った。宜野湾市長選挙の結果も踏まえ、改めて公約の辺野古新基地建設阻止に対する手腕が玉城氏に問われることになる。
復帰50年の節目に行われた今回の知事選挙で、沖縄県民は玉城県政の継続を選んだ。辺野古新基地建設阻止はもちろんのこと、コロナ禍で落ち込んだ沖縄経済をどう立て直していくのかなど、さまざまな課題が山積する中、公約をどう実現していくのか、玉城県政の4年間の舵取りに注目が集まる。
次呂久勲
旧統一教会、自民に逆風
沖縄県知事選挙は、自民党沖縄県連の候補者選考会議が佐喜真淳氏を候補者に決定した時点で、勝敗は決していた。
4年前の知事選。保守のエースと目されていた佐喜眞氏が宜野湾市長を辞職して立候補した。だが、名護市辺野古の海を埋め立てる新基地建設には一切触れず、大挙して応援に押し寄せた政府・自公とのパイプを強調したのだが、落選した。
政府挙げての札束攻勢は、基地はいらないという沖縄の民意の前に、はかなく散ったのだった。
懲りずに県連はまたも佐喜真氏を擁立した。これに自民支持者からは、「なぜ落ちた人がまた出るのか」と不満が噴出した。加えて旧統一教会問題が連日、マスコミで取り上げられたことで、佐喜真氏と旧統一教会との関係が明るみになり、佐喜真氏は謝罪せざるを得ず、県連は万事休すとなった。
ある県連幹部は「それを払しょくするために大掛かりな総決起大会を開いた。だが旧統一教会問題は、佐喜真氏にボディブローのように効いた」と語る。
旧統一教会問題と距離を置きたい公明の支持母体・創価学会の一部会員は、佐喜真氏を推さず玉城デニー氏支持に回った。
また、沖縄の統一地方選と重なり、自民党内も地方議員の応援で精いっぱいと、佐喜真氏の事務所に出入りする姿が減っていった。前回、玉城氏を支援した経済関係者は、今回は佐喜真氏を支持したのだが。
佐喜真氏の誤算は、前回、辺野古をスルーしたことから一転して容認を打ち出したことにある。県民の7割が辺野古反対なのに、直近の参院選で容認を明確にした元総務官僚の候補が現職に肉薄したことを過大評価したのだろう。
今回の知事選は、自公と経済界と政府の敗北であり、県民の良識の勝利である。
金城正洋
「手立てはまだある」示す
復帰50年の節目の沖縄県知事選で県民が改めて示したのは、米軍普天間飛行場を名護市辺野古へ移設する政府計画への「反対」だった。
知事選で辺野古移設の反対を公約した候補者が勝利したのは3回連続だ。沖縄の民意は底堅い。
知事選で移設反対の民意が強固に示されるきっかけとなったのは2013年、当時の仲井真弘多知事が公約に反して防衛省の埋め立て申請を承認したことにさかのぼる。仲井真氏は県民の批判を浴び、3期目を目指した翌年の知事選で故翁長雄志知事に敗れた。
しかし、仲井真氏の承認によって、民意を受けた翁長氏も、その後の玉城デニー氏も、苦戦を強いられている。
1期目で玉城氏は、辺野古の軟弱地盤改良で政府が出した設計変更申請を不承認とした。事実上の「最後のカード」と言われるが、政府は次々と対抗措置を取り、国と県は新たな法廷闘争に入っている。先行きは不透明だ。
一方、工事の進捗もまた見通せない。埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤(深さ90b)の改良は前例がない。防衛省は、最短でも事業完了は14年後とするが、地盤改良の難しさを考えればそこからさらに数年後となることも想像に難くない。返還合意から40年近く経って基地が完成しても国際情勢に対応できるのかとの疑問もすでに出ている。
そうした最中、今選挙では、膠着状態の辺野古問題について玉城氏から新たな提起がなされた。候補者討論会で玉城氏は、既に埋め立てられた部分の平和利用を明言したのである。それは、たとえ工事が進んでも、移設反対という民意の実現は可能であるということを示唆している。
玉城氏は今後、国連や米議会など、国際社会へ直接アピールしていく考えも表明した。「われわれが取り得る手だてはまだまだある」(玉城氏)との言葉からは、沖縄があきらめない限り、政府の計画の実現は困難であるとの覚悟が読み取れた。
黒島美奈子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号
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