2022年11月07日

【おすすめ本】又吉直樹+ヨシタケシンスケ『その本は』ー芥川賞作家と絵本作家がコラボして紡いだ本の凄さ!=萩山 拓(ライター)

 『その本は』、大人が 読むべき類い稀な「本」 だ。子ども向けの絵本と軽くみてはならない。
 ある国の本好きな王様は視力も衰え、本が読めなくなってきたので、二人の男に世界をまわり「めずらしい本」の話を聞き出し、内容を語ってほしいと依頼する。
 振り分け髪の男(又吉直樹)は左回りで、スキ ンヘッドの男(ヨシタケシンスケ)は右回りで、 本探しの旅に出る。1年後に帰国した二人は一夜ごとに交代し、様々な本の話を王様に聞かせる。
 13夜にわたって語った「その本」の数は51冊、長髪男が33冊、光頭男が18冊に及ぶ。満足した王様は、二人の話を1冊の本に纏めよと指示してこの世を去った。

 完成した『その本は』長髪男が1ページ1話を文章で、光頭男が見開き2ページにイラストと手書きの短い文章を添えて1話を、それぞれ紡いで構成されていた。
 とりわけ長髪男が、第 7夜に紡いだ物語は感動ものだ。ここだけ39ページも使って小学校5年生の男女が交換日記を介して成長していくストーリーだ。まさに又吉直樹の自画像である。
 光頭男が語る話は、第12夜の「その本は、評判が悪かった。」がいい。 本が持つメッセージの深さに、絶大な信頼を寄せるヨシタケシンスケの心意気が伝わってくる。

 さてさて『その本は』、 これで終わりではない。刊行半年後に事件が起きる。その展開は読んでのお楽しみ。ただし最終ページの中央に1行書かれた「その本は…」の、 …に当てはまる文字は、裁判の際に発せられる嬉しい響きの2文字熟語が、評者には浮かぶのだが。(ポプラ社1500円)
「その本は」.jpg
posted by JCJ at 08:54 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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