2022年11月28日

【22年度JCJ賞受賞者スピーチ】消えた「四島返還」安倍「2島返還」を検証 北海道新聞社 渡辺玲男さん

                              
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北方領土問題は北海道新聞にとって大きなテーマです。賞をいただいた本を書いたのは現在、モスクワ支局長の記者と会場に来ている小林記者、私の3人ですが、50人以上の記者の情報の積み重ねで完成しました。この7年8カ月間にかかわってきた取材班一同喜んでいます。
安倍政権は18年11月のシンガポール会談で、北方領土4島返還から2島返還に転換する非常に大きな歴史的カードを切りました。

安倍政権が歴代で、対ロ外交に最も政治エネルギーを注いだ政権だったことは間違いありません。その中で感じたのは、安倍政権の対ロ外交の内容が自民党、政権与党内でも意外と知られていなかったことです。それは安倍政権が「基本的な方針は変わっていない」と言い続けたこともありますが、党内では「あれは転換ではなく2島先行だ」「4島は諦めてない。先にまず2島交渉をやっているのだ」という誤解もかなり広まっていました。

これは伝える側にも問題があったと思っています。首脳会談などのタイミングだと盛り上がって報道するが、それが終わると関心が薄れてしまう。7年8カ月に何回も波があり、同じことが繰り返されてきました。
2年前の9月、突然の退陣で「日露平和条約については断腸の思いだ」と言った安倍さんは自分が実際に2島に転換したことは全く説明しません。これではどういう対ロ交渉が行われてきたかを残さないと同じ事が繰り返される。安倍外交をきっちり評価したうえで対ロシア関係を考えていくべきだと考えました。
まず、取材班が積み重ねてきた約1万7000件の取材メモを全部チェックし直す作業から始め、書いてきた記事と記事の間のストーリーが見えていないところ、見過ごしていた事実や大きな流れを追加取材し、実際に極秘提案があった事実や首脳間での実際にあったやり取りもつかみました。

 本を出すにあたっては、北方領土問題が国と国の外交交渉だけでなく、4島に隣接する根室や漁業者の身近な生活に影響していることを知っていただきたいと思い北海道新聞電子版に公開しました。
 昨年12月、インタビューに応じた安倍さんは「2島転換は間違ってなかった。プーチン大統領との間で解決するしかない」と主張しましたが、2カ月後のウクライナ侵攻で難しくなり、安倍さんも亡くなりました。
 今、永田町は「ロシアとの対話は不要」との空気です。だからこそ私たちは北海道から引き続き報道を続けます。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 22年度JCJ賞受賞者スピーチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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