2022年12月29日

【おすすめ本】鈴木エイト『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』―大手メディアはなぜ目を背けた 重い課題を突き付ける一冊=藤倉善郎(ジャーナリスト)

 官房長官だった安倍晋三元首相が統一教会関連イベントへの祝電で批判されたのは、小泉政権時代の2006年。以降、統一教会と政治家の関わりが一般メディアで報道される場面は激減した。
 そんな中、09年創刊のウェブメディア『やや日刊カルト新聞』で統一教会問題の取材・報道活動を始めたのが、本書の著者、鈴木エイト氏だ。

 政界方面の取材を本格させる転機となったのは、第二次安倍政権発足後。13年参院選で、鈴木氏は首相官邸と統一教会の裏取引を示す文書を入手する。以降、政治家と統一教会や関連団体との接触情報を得てはイベントに足を運び、関係者に話を聞き、議員自身にも接触して事実確認を試みる。取材を拒まれたり、時には警察を呼ばれたことも。

 取材成果は、やや日刊カルト新聞のほか、扶桑社の『ハーバー・ビジネス・オンライン』(すでに新規記事の配信は停止)でも連載。それが本書のベースになっている。
 鈴木氏の記事は、自民党に批判的な左派やリベラル方面からの評価が高かった。しかし自身は自民党に限らず立憲民主党などの野党議員も別け隔てなく取材して記事にした。結果的に、統一教会と接点を持つ議員の数が圧倒的に多かったのが自民党だった。

 本書は、安倍氏暗殺から3カ月足らず、国葬前日の発売というスピード出版。それでいて、精密なデータやエピソードで満ち溢れている。大手メディアが取り上げないテーマを9年にもわたり取材し蓄積してきた結果だ。
 自民党の問題だけではない。長年、これほどの問題から大手メディアが目を背け続けてきたという現実も、私たちに突きつけてくる。ジャーナリズムが保つ本来の役割やその力を思い知らされる一冊だ。(小学館1600円)藤倉善郎・ジャーナリスト
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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