泣いている馬毛島
■鹿児島県・馬毛島に米軍と自衛隊の基地を建設する工事が、住民の反対を無視して12日から始まった。
硫黄島(東京・小笠原諸島)で行っていた米軍ジェット戦闘機の離着陸訓練(FCLP)を、わざわざ東シナ海に近い馬毛島に移し、岩国基地との連携をよくするためだったが、ここにきて南西諸島の軍備強化にあわせ、本格的な基地建設へとエスカレートしたのだ。
■馬毛島は鹿児島県種子島の西北12キロに位置し、マゲシカが生息する自然豊かな無人島。そこに滑走路や駐機施設、火薬庫などを整備し、訓練に最低限必要な施設を先行して工期4年で完成させる。あわせて自衛隊の陸・海・空を統合した基地を設置し、米軍とともに共同活用するという。
南西諸島のミサイル基地化
■日米両政府は、日本列島を縦断し沖縄・与那国島まで南西諸島を数珠つなぎにし、各地に長射程のミサイルを配備し、両国が共同協力して対中国を想定した「敵基地攻撃能力」の強化に懸命となっている。
12日に交わされた「2プラス2」の合意文書に端的に表れている。米国は沖縄に駐留する海兵隊約1万人を改編し、南・東シナ海へ進出を強める中国をけん制し、対艦ミサイルなど即応性のある「海兵沿岸連隊(MLR)」へと発展させ、南西諸島の防衛に充てるという。
■日本政府も沖縄の防衛・警備を担当する陸上自衛隊第15旅団を師団に格上げし、ミサイル部隊の配備や弾薬の備蓄を増強する。また離島防衛専門部隊「水陸機動団」を創設し、離島奪還を想定した日米合同訓練も沖縄で強めている。
さらに自衛隊駐屯地を与那国島や宮古島に作り、今年は石垣島にも開設する。徳之島など自衛隊施設のない島でも部隊展開を図り、さらには離島の民間空港を国管理に移し軍事利用を狙う動きすら出ている。
「台湾有事」へ机上演習
■つい最近、米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)は、中国が3年後の2026年に台湾へ侵攻すると想定し、米軍の動きについてシュミレーションした結果を公表した。
その報告書によると、「在日米軍基地を使わなければ、台湾防衛に向けた米軍の戦闘機・攻撃機は出撃できず、日本は最重要な<要>であり、自衛隊の参戦が不可欠」と指摘した。
■米中両軍が台湾に進攻すれば、当然、在日米軍や自衛隊の基地は中国軍によるミサイル攻撃にさらされ、多大な被害と死傷者が生じる。
米軍では2隻の空母が撃沈され、168〜372機の航空機、7〜20隻の艦船を失うという。日本の自衛隊は122機の航空機、26隻の艦船が中国側の攻撃で失われ、米軍・台湾軍合わせて約3200人・1日140人ほどが戦死すると試算している。
いま必要な外交努力
■日本が攻撃されていなくとも、米国が台湾に侵攻し中国と戦争を始めれば、米国は日本に「集団的自衛権の行使」を求めるから、否が応でも「米国の戦争」に巻き込まれてしまう。挙句に中国からの「報復攻撃」を受け、「自分の国は自分で守る」どころか、「米国の戦争」で自国に多大な犠牲者が出るのは目に見えている。
■いま必要なのは、中国や北朝鮮の脅威をいたずらに煽り、軍備増強・敵基地攻撃能力を声高に叫ぶのでなく、外交努力を尽くして意思疎通を図り、緊張緩和を促進し地域の安定を図るのが「憲法9条」を持つ日本の役割ではないか。
■日中国交回復50年を経過した現在、改めて日本は中国に首脳会談を呼び掛け、東アジアの平和と安定を図るべきだ。また北朝鮮に対しても、2002年9月17日、小泉首相と金正日総書記が会談し、国交正常化交渉の再開で一致した「日朝平壌宣言」に立ち戻り、戦争回避に向け金正恩総書記に会談を申し入れるべきではないか。
これを一笑に付す前に、どれだけ外交努力が重ねられたのか、顧みるべきだ。(2023/1/15)
2023年01月15日
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