2023年02月03日

【月刊マスコミ評・新聞】原発推進 学術会議の独立性を侵す動き=山田明

 正月元旦の各紙社説に注目する。ウクライナ戦争が続くなか、テーマは戦争と平和、民主主義が多い。朝日は「戦争を止める英知いまこそ」と訴える。長文の読売社説は、政府が「反撃能力」の保有など、防衛政策の大転換となる安保政策を決定したのは当然だと論じる。
 本紙が昨年12月号で報じたように、岸田政権の大軍拡にお墨付きを与えた首相の諮問機関「有識者会議」メンバーに、読売新聞グループの現役社長が名を連ねていた。日経も現役役員がメンバーだ。元旦の読売社説は、有識者会議報告書と同じトーンだ。ここでもメディアの姿勢が鋭く問われる。

 毎日1月4日社説は「抑止力」偏重の危うさとして、防衛力の強化ばかりでは、相手の警戒感を高め、際限なき軍拡競争に陥る「安全保障のジレンマ」が待ち受ける。国民生活を守る総合力をいかに高めるかが問われると指摘する。
 なにより外交面での粘り強い働きかけが大切だ。日米首脳会談で大軍拡を約束するが、国会での徹底した議論と検証こそ求められる。メディアは戦争をあおるような論調は厳に慎むべきだ。
 岸田政権は支持率低迷が続くが、防衛だけでなく、原発政策でもエネルギー問題に便乗し、拙速な政策大転換を強引に進めている。国民の声を聞かず、原発推進勢力の意向に沿うものだ。「事故の惨禍から学んだ教訓を思い起こし、将来への責任を果たす道を真剣に考えるときである」(朝日12月23日社説)。

 もう一つ指摘したいのが、日本学術会議の独立性を侵す動きである。政府は任命拒否問題を棚上げして、会員選考に第三者を関与させるなどの組織改革方針を公表した。大軍拡とも関連する動きだ。読売12月31日社説は政府方針に追随して「国費を投じている事実は重い」と、政府が会員の選考手続きに関与することは何ら問題ないと指摘する。戦前の暗い歴史からも、学問の次に来るのはメディアへの介入ではないか。
 今春には統一地方選が行われる。旧統一教会と政治、とりわけ自民党との癒着、岸田政権による熟議なき政策大転換にも審判が下されるであろう。
 大阪では夢洲へのIRカジノ誘致の是非が争点になりそうだ。長らく続く「維新政治」に対し、住民がどのような判断を示すか注目したい。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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