2023年02月05日

【今週の風考計】2.5─子育てに「N分N乗方式」は効果あるのかという疑問

自民党の反省って本当か?
岸田首相は「異次元の少子化対策」というが、国会答弁を聞いても、具体策は「未定」、中身が全く分からない。これまで13年間、自民党や政府は、あの統一協会と軌を一にして「子育ては親・家庭が担うもの」とし、所得制限のない「子ども手当」の創設すら反対してきた。
 民主党政権の提案を採決する際には、丸川珠代議員は「愚か者めが」と大声で罵倒し、その文字ロゴ入りTシャツまで作って販売したというから呆れる。他の自民党議員も「子育てを家庭から奪い取る国家化・社会化」の社会主義思想、ポルポトと同じとまで誹謗した。
ところが突如、今国会で自民党の茂木幹事長が「児童手当の所得制限を撤廃する」と言い出した。丸川議員も首相も「これまでの対応を反省する」というが、どこまで反省しているのか、<日光猿軍団>の反省で終わらなければと願う。

今や常識、子育ては社会全体で
子供を産み育てる経済的保障も含め、社会環境の充実こそ求められているのに、いまだに「少子化の原因は晩婚化だ」と女性に責任を押しつける元首相を始め、明治以来の家父長制や男尊女卑の考え方が、根強く自民党のセンセイ方にあるからだ。
 ジェンダー平等の社会への改革・転換は停滞したまま、男女の賃金格差は生涯賃金で1億円、女性に安い賃金で働かせ、かつ子どもを産み育てる責任まで負わせる仕組みを変えなきゃダメ。
とりわけ子育てに大きな負担のかかる2歳までの保育費と18歳までの医療費は無料にすべきだ。義務教育での給食費は完全無償化も、戦争に使う5年間で43兆円の軍事費を充てれば100年間は継続できる。
 また教育費にかかわる学費や入学金の軽減、奨学金制度の見直しも、絶対に必要だ。入学してもいないのに取られる入学金徴収はヤラズブッタクリ、すぐやめるべきだ。

「N分N乗方式」への疑問
さて、これらの子育て・少子化対策にすぐ役立つ提案の議論は脇に置いて、自民・維新・国民各党そろい踏みで所得税の徴収を「N分N乗方式」にする提案が飛び出した。
 所得税の課税対象を「個人」ではなく「世帯」とし、1世帯分の所得を合算したうえで、子どもなど扶養家族も含めた人数で総所得を割り、その数字を元に所得税の徴収額を決め納める仕組みだ。世帯当たりの収入が同額ならば、子供が多ければ多いほど納税額は低く抑えられる。
この「N分N乗方式」は、今から77年前の1946年フランスで採用され、徐々に出生率の増加に寄与したといわれる。ただしフランスの子育て支援に投ずる公的支出はGDP比3.6%、日本はGDP比1.7%、フランスの半分にも及ばず、平均2.24%のOECD諸国では下位。その状況を忘れてはならない。
こうした貧弱な日本の子育て環境下で、「N分N乗方式」を導入したらどうなるか。まず高額所得者は、所得額を世帯人数で割るために低い徴収税率に移行し、納税額が大幅に減りメリットは大きい。社会全体にとっても所得税の再分配機能が低下する。
 肝心なのは翌年に反映する減税分が子育てに回るだろうか。実際は賃上げ不十分・物価高が続く以上、日々の家計に使われてしまうのが落ちではないか。
子育てに直結する費目への現金支援、すなわち子ども手当の増額、各種の保育・教育費目の無償化や減額こそ、いま急がれる対策だ。
 子育てへの公的支援に占める現金・現物支給の額はGDP比で、日本は0.65%、英国は2.12%、フランスは1.42%、あまりにも低水準すぎる。「異次元の小子化対策」は待ったなし。6月まで「未定」で済ますわけにはいかない。(2023/2/5)
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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