岸田文雄首相は昨年12月16日、「専守防衛」から「敵基地攻撃」の自衛隊への大転換を閣議決定したのに続けて、2023年1月13日に訪米し、バイデン米大統領との「共同声明」で、対米公約にしてしまった。臨時国会の閉会を狙った暴挙だった。
軍事ジャーナリストの前田哲男氏は、『世界』3月号(岩波書店)で、「岸田政権は〈臨戦化安保〉の実体化に踏み切った」と分析し、日米安保条約を「対中国軍事同盟」へと一変させ、「とりわけ中国に向ける敵意がつよい」と警鐘を鳴らしている。
「安保三文書」とは、@「国家安全保障戦略について」A「国家防衛戦略について」(旧防衛計画の大綱)B「防衛力整備計画について」(旧中期防衛力整備計画)を指す。わざわざ米国の戦略文書と同じ名称にしたのである。
文書@が「反撃能力」を定義し、軍事費GDP2%を明記、文書Aが「防衛目標」の設定と方法、手段を明記、文書Bが10年後の体制を念頭に5年間の経費総額、装備品の数量などを記載している。2023〜2027年度の5年間で軍事費総額43兆円という途方もない税金を投入して大軍拡をめざすというものだ。憲法の平和理念や第9条に違反し、国民への「丁寧な説明」が完全に欠落している。
一方、『正論』3月号(産経新聞社)は安保戦略総点検の特集を組み、慶應義塾大学教授の森聡氏が「リスク高まる世界に向き合う日本 『国家安保戦略読解』(前半)」を論じている。「第二次安倍政権期」の「安全保障政策を刷新する取り組みが、踏襲され進化する形で新戦略が策定されたことが示唆されている」という。森氏は、「国家安全保障戦略」が中国を「脅威」と性格付けていないというが、中国を「我が国と国際社会の深刻な懸念事項」「これまでにない最大の戦略的挑戦」としているのが「国家安全保障戦略」なのである。
『VOICE(ボイス)』3月号(PHP)も「国防の責任」という特集を組み、大軍拡をあおる。兼原信克元国家安全保障局次長によると、秋葉剛男国家安全保障局長が官僚とともに書き下ろし、岸田首相の裁可を得たのが「安保三文書」であるという。この経過から推測できるのは、2014年の特定秘密保護法の施行とともに発足した国家安全保障局の役割である。同局が米国と秘密裡に進めてきた戦争計画の一端が「安保三文書」といえるだろう。アメリカの戦争に巻き込まれる秘密の計画が隠されている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号
2023年03月13日
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