2023年03月25日

【石橋記者へのヘイト裁判】記事内容で全面勝利 慰謝料認定は「不当」 差別禁止法への努力声明=佐藤隆三(神奈川支部) 

ヘイト問題を熱心に報じてきた神奈川新聞の石橋学記者(川崎支社編集委員・2016年JCJ賞受賞)が2019年2月、記事や言動で名誉を毀損されたとして損害賠償を求める裁判を起こされた。2020年2月には追加提訴され、そのふたつの裁判の判決が1月31日午前、横浜地裁川崎支部から出された。判決は原告の主張を一部認めたうえで、「被告は原告に15万円支払え」という不当なものだった。訴えていたのは、川崎市の差別根絶条例に異議を唱えて、2019年4月の川崎市議選に立候補した佐久間吾一氏(落選)。コロナ禍をはさみ、提訴から4年目の判決となった。

裁判の争点は4点でうち3点は神奈川新聞の記事。@2019年2月に、原告の「いわゆるコリア系の方が日本鋼管の土地を占領している」等の発言を「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と報じた記事、A2018年12月に、「レイシストを在日集住地区(佐藤注:池上町)に案内し、街を徘徊しながら『コリア系が不法占拠で住み続けている』と誹謗中傷し」と報じた記事、B2019年12月に、「全会一致に至った文教常任委員会の審議が報告されると議場では禁じられているはずの拍手が起き、寝たふりなのか本当に居眠りをしているのか、差別主義者の支援を受け今春の市議選に立候補した佐久間吾一氏の居場所はもはやなかった」との記事。判決はこれらの記事にいずれも違法性はなく名誉棄損は成立しないとして原告の主張を退けた。記事については石橋記者の全面勝利となった。

残りの1点は、市議選後に佐久間氏が街頭宣伝で行った、ヘイトスピーチ解消法で2016年5月の公園使用が不許可になったとの発言に、石橋記者が、当時は解消法施行前で不許可の根拠は公園条令と発言の間違いを指摘し、「勉強不足」「デタラメ」と発言したもの。判決は、その言動が原告の名誉を毀損したとして慰謝料の支払いを命じるものとなった。ちなみに、解消法の公布・施行は公園使用不許可翌月の2016年6月3日。
                  
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報告集会で弁護団は「記事がすべて正当とされたことは評価したい」「(不法占拠と誹謗中傷されてきた)池上町の名誉は守られた」とする一方、慰謝料15万円の認定については「社会常識からありえない判決」と厳しく批判し、「判決の解釈は高裁で争いたい」と述べた。石橋記者(=写真中央=)
は「レイシストを厳しく批判する正当性は認められた。私は判決で委縮しない。これからも記事を書いていく」「差別を禁止する法律がないことが裁判所のゆらぎ≠ニなっている。川崎市の条例を広げ、差別禁止法につなげていく努力をしたい」と決意を表明した。裁判と報告集会には多くの支援者がかけつけた。争いの場は東京高裁に移る。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号
posted by JCJ at 03:00 | TrackBack(0) | 裁判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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