2023年04月06日

【おすすめ本】山岡淳一郎『ルポ副反応疑い死 ワクチン政策と薬害を問い直す』―機能せぬ接種被害救済制度の闇を追う=永田浩三(武蔵大学教授)

コロナ禍が始まって3年。ワクチン接種の副反応による死者の報告は1900件に迫る。最近はこの副反応への関心が高まっているが、本書はその嚆矢だ。『世界』などでの連載をもとに、ワクチンに関わる日本社会の課題に迫った。
社会防衛という名の下、ワクチンの効用がリスクを上回るとして、なかば強要されてきた。だが、免疫にはいまだ未知の領域があり、重篤な副反応や死を引き起こしてきた。

接種3日後の息子の死を追う夫妻、プロ野球救援投手の心臓突然死。著者はその謎を追う中で、日本の医療制度の闇に突き当たる。
 日本には被害の救済制度があり、独立行政法人が評価を行う。だが、死亡報告事例の99%以上は評価不能と判定されているのが現実だ。
死亡一時金の申請419件のうち、支払われたのは10件。後遺症は、申請4595件のうち5分の1に手当てが支給されただけだ。長く待たされるケースも多く、救済制度が機能していない。

目を開かれたのは、被害を受けた人々が国に挑んだ闘いの歴史の章だ。
戦後、天然痘のワクチン接種で、多くの乳幼児が亡くなり重い障害を抱えた。1947年と48年の犠牲者は天然痘の死者をはるかに上回ったが、「特異体質」として無視された。半世紀にわたり家族・遺族が国を相手に闘った結果、救済の道が開かれた。
 この本は反ワクチンの奨めではない。ワクチンの安全、被害者救済を迅速に行う制度の構築なくして、社会など守れないことを訴える。ぜひ多くの人に読んでほしい。(ちくま新書840円)
                        
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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