耳を疑った。弁護団からも「前代未聞だ!」との声が上がった。
私たち辺野古・大浦湾沿岸住民ら20人が、玉城デニー知事の(辺野古埋め立てに関する)設計変更不承認を取り消した国土交通大臣の裁決は違法だと、その取り消しを求める抗告訴訟の第3回口頭弁論が那覇地裁で開かれる(3月23日)、その前日のことだ。原告意見陳述を予定していた私の陳述内容について、裁判所から、「穏当でない」表現があるので、書き換えなければ陳述を許可できないと、担当弁護士に連絡があったという。
私は今回、辺野古新基地建設問題について、生物多様性の観点から陳述を行った。人間活動による地球環境=生物多様性の劣化がこれ以上進めば人類の生存そのものが危うくなるという危機感を共有した世界の国々が結んだ生物多様性条約を、日本政府も批准している。率先して生物多様性を保全する義務を負う政府が、それと真逆に、世界の中でも稀有の生物多様性を残す「奇跡の海」=辺野古・大浦湾を、国民の血税を使って自ら破壊していることを、私は「国家犯罪」だと指摘した。
そして、国のこの行為が合法か否かを吟味することなく「原告適格なし」と判断するなら、裁判所も後世の人々から破壊の片棒を担いだと「断罪」されるだろうと書いた。
書き換えを要請された文言は、これら「罪」という文字の入った4か所だった。「修正」を拒否して意見陳述しない選択もあったが、弁護団と相談のうえ、私は「極めて不本意だが」と前置きして陳述を行い、弁護団は厳しく抗議した。福渡裕貴裁判長は「訴訟指揮の範囲」だと居直った。
同裁判長は、埋め立て承認撤回を巡る住民の抗告訴訟で昨年、「原告適格なし」として却下した(現在控訴中)前歴がある。
原告・被告の率直な言い分を聞いて判断する中立の立場を投げ捨て、行政権力に忖度し、「言論・表現の自由」に反する検閲や「言葉狩り」を行う司法を許すわけにはいかない。原告・弁護団は今後の対応を検討中だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
2023年05月15日
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