2023年05月16日

【焦点】「五輪災害」で反対運動 パリで過激化 日本も「外苑」再燃=橋詰雅博

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  2020年東京オリンピック開催(コロナ禍で1年延期)が決まった13年に巨額な財政負担や施設建設に伴う環境破壊、IOC(国際オリンピック委員会)のカネ儲け主義などを理由に結成された市民グループ・反五輪の会は、「東京そしてパリ終わらないオリンピック災害」と題した集会を3月25日に都内で開いた。
 フランスのパリ夏季五輪は来年7月下旬から8月上旬の日程で開催される。パリ五輪が決定した15年から「IOC解体」などを掲げて五輪反対活動を始めたグループの一員の佐々木夏子さんは=写真=(ライター兼翻訳者)パリ五輪災害≠フケースとして5つ挙げた。
★選手村建設のため外国人労働者アパートを取り壊す
NPO法人が1960年代から運営していた単身の黒人やアラブ人ら外国人労働者が住むアパートを選手村建設ためサン・トゥアン市は取り壊した。追い出された住人は仮設住宅で生活。五輪終了後に前の場所で暮らしたいと行政とオリンピック施設整備公社に訴えたが、交渉は不調に終わる。
★学校の真横に建設の高速道路ICへの反対運動起きた
選手村とパリ五輪競技場を結ぶためサンド・トニ市に新たに高速道路ICが幼稚園と小学校の真横に建設に。大量の排気ガスによる児童への健康被害を心配した保護者が中心となりIC反対運動が展開された。裁判で保護者側は敗訴した。
★メディアセンター建設が県立公園に悪影響及ぼす
メディアセンターはEU指定の県立公園に隣接。木が伐採され緑地は縮小、鳥やカエルなど生態系にも悪影響があると住民らは建設中止を求めて裁判を起こしたが敗訴した。
★五輪水泳選手の練習用プール建設で市民菜園消滅
練習用プールがつくられることで、1世紀近い歴史があるオーベルヴィリエ市の市民菜園が壊されることが判明。菜園利用者や近隣住民、戦闘的な環境保護団体「守るべき土地」の活動家らが菜園を占拠した。テントや小屋に寝泊まりする活動家は、住民登録し工事を阻止。しかし裁判で負けて菜園は消滅したが、昨年9月にパリ行政控訴院は、工事計画の見直しを命令した。
★AI監視カメラが合法化され監視社会が強化に
群衆の中で不審な行動者を検知するAI搭載監視カメラ導入を含む「オリンピック法案」をフランス議会は3月に可決。人権を侵害するとEUの各市民団体が法案撤回を求めていたが、議会は押し切った。五輪終了後もAI監視システムのもとで国民は暮らす。
 佐々木さんは「五輪支持の共産党影響下にある労組や市民団体以外の人たちによる練習用プール工事の阻止や選手村工事現場の停電を仕掛けるといったラディカルな妨害行動が起きている。ブルジョアの高学歴の若い白人が目立ちます」と過激になる反対運動を心配した。
 東京五輪災害と言えば、神宮外苑再開発が代表例だ。五輪口実に外苑一帯の諸規制を東京都は大幅に緩和し新国立競技場が建設された。さらに三井不動産が主導する秩父宮ラグビー場と神宮球場の建て替え、高層ビル建設などを盛り込んだ事業計画を小池百合子都知事は認可した。自然環境保全運動にも積極的に取り組んでいた故坂本龍一さんは大量の樹木が伐採されると再開発に反対し、周辺住民らも事業計画認可取り消しを求め東京地裁に提訴した。
 「五輪災害」に真剣に向き合う時がきた。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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