2023年05月30日

【オンライン講演】政府メディア戦略とマスコミの機能不全 映画『妖怪の孫』公開直前 内山監督が語る=鈴木賀津彦

内山監督 2023-04-11 153513.png

 映画『妖怪の孫』の公開直前の3月12日、「政府のメディア戦略の現状とマスメディアの機能不全」をテーマに、監督の内山雄人さん=写真=を講師にJCJオンライン講演会が開かれた。
内山さんは「岸田政権が原発推進や米国の言いなりの軍拡路線を進めるなどして、この国がこんなに危険な状態なのに、マスコミが『おかしくないか』とも言わなくなっている。こんな現状をどうやって変えていくのかを、この映画で問いたかった」と述べ、「自粛するマスメディアの現実」に危機感をあらわにした。

 「安倍晋三とはいったい何者であったのか。この国に遺したものは何だったのか」と安倍政治を問うた映画『妖怪の孫』で、内山さんは「なぜ安倍政権は選挙に強かったのか、何が国民の多くを引き付けたのか」という視点で、政権のメディア戦略を掘り下げている。
 誰もが発信者になれるインターネット時代の自民党のメディア戦略が成果を上げ、テレビなどマスメディアが政権批判をしないよう「自粛」し、機能不全になっている現実がなぜ起きているのかを分析した。
 しかし、メディアは政府機関などとは違い、組織として闘うのだという姿勢になれば、闘えるはずだと強調。映画では政治を難しく伝えるのではなく、娯楽として家族で見に行けるエンタテイメント性を工夫するなど、正しいことを伝えることがビジネスとしてもきちんと成り立つようにしたかったという。

 安倍政治を支えている構造に切り込んだこのドキュメンタリーを「政治ミステリー劇場」と打ち出したのは、分かりやすく伝えるため。菅前首相を追った前作『パンケーキを毒見する』を「政治バラエティ」として示した手法と同様、長期政権を支える仕組みをミステリーの謎解きのように提示し、観る人が「自分ごと」として受け止められるようにした。
 放送法の問題では、報道の自由を守るために「公平性」が強調されるのであって、政権が逆の言い方をして介入しようとすることにメディア側が問題にしていないことも「自粛」だと話した。

 後半の議論では、参加者から「国民が反対らしい反対もしないうちに、いつの間にか軍拡政策が決まっているようになってきたのは何故なのか」と質問があり、内田さんは「そこに一番危機感がある。岸田政権のヌルヌルしたやり方は、たちが悪い」と捉え、こうした状況だからこそ「マスコミが問題意識を持って問題を明確にしていかねければならない」と語った。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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