統一教会(現名称は世界平和統一家庭連合)を30年以上注視してきた宗教社会学者(北大大学院教授)の渾身の著だ。
統一教会は、教祖がメシヤを自称するキリスト教系新宗教の一つだが、韓国の民衆宗教の影響も強い。初期には性的な「血分け」も行われたという。
創始者の文鮮明は、初期信者によると「人心収攬の術に天賦の才」を持つ人物だったようだ。
日本の統一教会員が霊感商法を行い、信者に高額献金を迫る契機は、文鮮明の世界巡回や勝共活動に多額の資金を必要としたことだと見る。
「地上天国実現のため、財を神の世界に戻す」という教えが信者の良心を麻痺させた。韓国植民地化への教祖らの恨(ハン)と日本人の贖罪意識も、韓国本部のための苛烈な金集めを正当化した。
「統一教会による霊感商法は、日本宗教史における最大規模の詐欺事件となってもおかしくはなかった」と書く。だが、「販社の販売員がしたことで、宗教法人は関与していない」と教団は主張した。幹部人事など実際は一体だが、捜査の壁になったと著者は見る。
政治との密着は、選挙の電話がけ、ポスター貼り、演説会などに人を派遣してくれる教団が、政治家には有難い存在だからだ。
国際合同結婚で渡韓した日本人女性信者は約7000人。著者は韓国でインタビューしている。教団に疑問を持つ人は少なくないが、「子供は韓国人として育ったから」と、韓国で生き続けるしかないと覚悟している人もいた。
社会的批判を受け、世代交代も進む統一教会は、今後どうなるのか。著者は3つのシナリオを挙げるが、あとはぜひ本書を。
(中公新書960円)
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