2023年06月13日

【選挙】地方でも女性トップ当選 愛知・安城 野場華世市議=鈴木賀津彦

                      
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  女性の当選は、杉並区などの都心部で注目されがちだが、地方でも大きな動きが起きている。愛知県安城市でトップ当選した女性候補(保守系)の選挙戦を取材した。
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 「どうしてこんなにたくさんの人が私のこと知ってたの!」。4683票を獲得し、2位に1000票以上の大差をつけてトップ当選を果たした安城市議の新人、野場華世さん(41)の喜びの声は驚きに満ちていた。

 そんな驚きの言葉が出たのもうなずける。野場さんが生まれ育った故郷の安城市に引っ越してきたのは、選挙のたった4か月前。さらに定数28人に対して38人が立候補した激戦区の上、野場市議の支持基盤となる北部地域からは新人女性が3人も出馬し三つ巴の戦いとなった。
 SNSを利用したネット選挙を制して票を集める候補も出てくる中で、野場さんはツイッターもインスタグラムも使用しなかった。利用したのはnoteというブログサイトのみだ。なぜSNSを積極的に利用しなかったのかを彼女に問うと、意外な答えが返ってきた。

 「私はプライベートと選挙活動を含めた政治活動の線引きについて、まだ結論が出せていません。だから、結論の出せていないものには手をださい。そして、表面的な発信をすることにも意味を感じていません。発するなら文章でしっかり発信することこそ誠意だと考えたからです」
 彼女には5歳と3歳の息子がおり、私生活をさらしすぎることへの危機感を持っていると教えてくれた。そして彼女の考え方はある意味戦略として正しかったという。選挙後、選挙中の一週間のブログ解析をすると、閲覧回数は1万回を超えており、市民の彼女への関心の高さがうかがえた。彼女のブログがなぜ人々に響いたのか、それは彼女が街頭演説で語った言葉に答えがあると話す。

 「私は1週間で街頭演説と個人演説会を合わせて50か所以上で開催しました。私が話したことは、提言する政策の裏付けとなる実体験です。子どもの能力を伸ばしたいという思いの裏にある、自分が受けたかった教育。子供の居場所を作りたいという裏にある、ヤングケアラーでいじめられっ子だった幼少期。誰かに助けてもらいたかった経験があるからこその、助けてあげられる環境の整備。そして新聞記者として培った行政や政治を見る目。すべて自分の言葉で語りました。泣いてくださる聴衆の方にたくさん出会いました」

 ブログには、彼女の率直な語り口で、本音の思いがつづられている。いま、彼女のもとには同世代の40代から「政策実現の手伝いをしたい」という声も届き始めたそうだ。
 「これまで政治に無関心だった世代は、ただ自分の思いに寄り添い共感してくれる同世代の代弁者を探していたのではないか」、彼女はこう選挙戦を振り返った。

 20年間も故郷を離れて舞い戻ってきた新人女性を圧倒的な支持で受け入れた安城市民。彼女は共感者を集めて政策チームを作るという。この4年間でどんな政策が実現していくのか注目しよう。   
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 選挙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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