2023年06月15日

【映画の鏡】真の「保守」とは何か『ハマのドン』「主役は横浜市民、俺は脇役」=鈴木賀津彦

  都内と横浜で5月5日から公開され連日満員の好スタートだが、映画館に足を運んで気になったのは、これを「反政府」の映画だと受け止めている人が予想以上に多いことだ。
 政府が推進するカジノを含むIRという国策に19万人超の署名を集め住民投票を求めた横浜市民や、カジノ反対の市長が誕生した2021年夏の横浜市長選挙を追っている。映画のパンフにも「主権は官邸にあらず、主権在民。」と打ち出し、政府の問題点を鋭く追及しているから、そう受け止められるのかもしれない。

 しかし、「ハマのドン」と呼ばれる藤木幸夫にしても、「解説役」のように登場する元参院議員の斎藤文夫や元横浜市議会議長の藤代耕一ら自民党の重鎮たちも、保守の本流を歩んできた人たち。良き時代の「ミスター自民党」の面々が、今の自民党政権の間違いを正そうと発言する姿に拍手を送りたくなる。カジノ誘致で税収増になると考えている政権与党なんて、どう考えても許せないのだ。

 藤木が「主役は市民、俺は脇役」と強調する姿から、松原文枝監督は「藤木さんの覚悟が人を動かし、人と人がつながっていく。人を大切にし、地域を大事にし、時代をつなげていく。それが本来の保守ではないだろうか。安倍政権時代から、意見が違えば、異論を唱えれば『敵だ、見方だ』と分断する風潮が広がった。だが、保守とは意見の違いがあっても受け入れていく包容力があったはずだ」と述べている。

 自民党はこの映画を「党員必見」と指定し、「真の保守とは何か」を学ぶ最適な教材にしてみてはどうだろう―。保守を自認する人たちにこそ見てほしい作品なのだ。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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