●23年4月の出版物販売金額865億円(前年比12.8%減)、書籍483億円(同11.6%減)、雑誌382億円(同14.2%減)。月刊誌324億円(同15.1%減)、週刊誌57億円(同8.9%減)。返品率は書籍31.9%、雑誌42.3%、月刊誌41.2%、週刊誌47.9%。
各部門とも、前月から2倍以上の大幅な減となり、村上春樹の6年ぶりの長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)・重版合わせ35万部の発行は上半期書籍ベストセラー第1位となったが、出版界の低迷打破の起爆剤とはならず。
●KADOKAWAの連結決算─売上高2554億円(前年比15.5%増)、営業利益259億円(同40.0%増)は共に過去最高額。当期純利益126億8千万円(同9.9%減)。要因は「ゲーム事業」の好調による。売上高303億円(同55.7%増)、営業利益142億(同173.4%増)の数字が如実に示す。
●日販グループ35社の連結決算では売上高4440億円(前年比12.1%減)、営業損失4億円(前年は28億4000万円の利益)、取次・小売店事業が減収・営業赤字により全体を押し下げた。
日販単体の売上高3551億(同12.9%減)、当期純損失22億9700万円(同4億8500万円の利益)。「書籍」「雑誌」「コミックス」「開発商品」の全4分野で減収。市場全体が縮小し、取引書店の閉店や帳合変更も大きく影響、前年の売上高から約523億円減少。
●公立小中学校の学校図書館を充実させるため図書の購入費用として、文科省は220億円を各自治体に交付したが、図書購入に使われたのは6割弱の約126億円(57%)にとどまる。財政難などを理由に他の目的に回され、図書購入費は7年連続で減少している。
学校規模に応じた蔵書数を示す「学校図書館図書標準」を達成している学校の割合は、小学校71%、中学校61%にとどまる。
●絵本作家・田島征彦(ゆきひこ)さんが、長年の取材の集大成として「沖縄戦」を描いた絵本『なきむしせいとく─沖縄戦にまきこまれた少年の物語』(童心社)が、第54回講談社絵本賞を受賞。
絵本の内容は、1945年戦争末期の沖縄を舞台に、8歳の男の子である泣き虫せいとくの視点から、沖縄での空襲や艦砲射撃、そして地上戦……。家族を失い、死体を踏み越えて逃げ、味方と避難場所を奪い合う沖縄戦など、悲惨な現場を絵本に仕上げ、戦争を見せて怖がらせるのではなく、平和の大切さを伝える画期的な労作。
●廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(全20巻・偕成社)が、2013年5月に刊行されて以降からロングセラーを続けている。累計発行部数400万部を突破。とりわけ2020年9月にNHK教育テレビで放映され、小学生だけでなく中学生にも人気のシリーズとなった。「銭天堂」の内容的なエグさ、登場人物の身につまされる内面描写は、中学生をも惹きつける魅力がある。
●新聞労連が「言論機関の言論の自由を考える」と題するシンポジウムを開催(6/3)。そこで「社外での言論活動」に関するアンケート結果が公表され、会社による規制強化の進行が報告された。 社外執筆の禁止事例8件、講演ダメ3件、出版ストップ1件、形式上「届け出制」でも不許可の事例も出ているという。「慰安婦問題など見解が割れるもの、政治家から反論があったものなどに、規制強化の傾向がある」という。
日刊ゲンダイDIGITAL(6/5付)によると、シンポジウムではTBSのキャスター・金平茂紀氏が「米NYタイムズや英BBCなどは社員にSNS発信や社外活動を推奨している。むしろ社外言論が会社の価値を高めるとの判断だ」と発言。元共同通信記者のジャーナリスト・青木理氏は「言論・報道の自由の担い手たるメディアが言論・報道の自由を守れなければ、社会に流通する情報が減る。誰が被害を受けるのか自明ではないか」と話した。「新聞社が萎縮すれば権力の思うツボ。これでは21世紀の大政翼賛会になってしまいます」(政治評論家・本澤二郎氏)と指摘する。
2023年06月19日
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