東京の都道府県会館で5月末に開かれた関東地方知事会議で静岡県の川勝平太知事が注目される発言をした。高レベル放射性廃棄物いわゆる「核のごみ」の最終処分場を都の南東約2千`にある日本最南端の南鳥島(小笠原村の一部)を候補地として検討すべきだと、小池百合子都知事に提案したのだ。静岡県には浜岡原発(5基のうち1、2号基は廃炉、3,4、5基は長期停止中)がある。核のゴミに関心を持つのは当然だけれども、唐突感は否めない。川勝知事がこんな提案をした理由は、同県清水市に施設を構える東海大学海洋研究所の平朝彦所長(地質学者)と、同県発行の雑誌での対談が引き金になっている(今年1月の総合情報誌「ふじのくに」に掲載)。対談で平所長はこう述べている。
「南鳥島は太平洋プレート(太平洋の海底の大部分を占める岩盤)上にある唯一の日本領土で、周囲6`bの国有地。最大の特徴は地質的な安定性です。地震、火山活動はまず起きない。これは確信を持って断言できます。なおかつ、住民がおらず漁業権など、いろいろな権利が設定されていない。地下へ数`bのボーリングをして、使用済み核燃料を処分するキャニスター(核のゴミの廃液をガラス原料で溶かし合わせたものが入ったステンレス容器)を入れて、セメントで封印することもできます。地球上で最高レベルの安定性があるので、壊れる不安はまずありません」「最適な核廃棄物処理方法だと信じて疑いません」
川勝知事は「国難を救える島」「モデルケースを日本が提供できれば、世界に誇れる提言にもなりますと」と平所長の研究を称えた。
川勝提案に対し小池都知事は「国がしっかりと対応すると考えている」とそっけない答えだった。
実は平所長は、南鳥島は核のゴミの地層処分(地下深く埋める)の最適地とローカル局の北海道放送(HBC)からの取材で3年前に提言している。経産省にもこの提言を伝えたが、返事はないそうだ。
核のゴミの地層処分計画を進める政府は、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で文献調査を進めている。また長崎県の離島・対馬市は核のゴミの最終処分受け入れ誘致に向けて動きだしている。
地震大国・日本には10万年以上も核のゴミを封じ込める適地はないと言われている状況下で、南鳥島にスポットライトが当たった。筆者は早速、平所長に取材を申し込んだ。残念ながら「南鳥島での地層処分をさらに研究したい」と断られた。
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