2023年07月01日

【焦点】オランダ「エルミタージュ美術館」改名、実は福島にも同美術館分館計画が。幻に終わる=橋詰雅博

  ロシアのプーチン大統領の故郷サンクトペテルブルクにある世界有数のコレクションを誇るエルミタージュ美術館の別館として2009年に開館したオランダの「アムステルダム・エルミタージュ美術館」が6月26日に「H・ART美術館」に改名した。ロシアのウクライナ侵攻によりロシアの美術館との関係を断ち1年以上半休状態だった。しかし、ロンドンの大英博物館やパリのポンピドーセンター、ワシントンのスミソニアン博物館と提携し9月から新名称で再開する。

 実はこのエルミタージュ美術館の分館が福島に建設される計画が1990年代後半にあった。朝日新聞特別報道部(同部は現在ない)が取材し新聞連載記事をまとめた単行本『原発利権を追う 電力をめぐるカネと権力の構造』(朝日新聞出版2014年9月刊行)で詳しく報じている。それによると東京電力は福島第一原発に7号機と8号機増設の見返りとしてサッカー施設「Jヴィレッジ」と並んでエルミタージュ美術館の分館建設計画を密かに進めた。美術館側と2回交渉し分館用地として福島県猪苗代湖畔を取得することが決まった。その際、美術館側は保証金として5億円求め、東電が5億を寄付したという。この寄付金は利用者の電気料金が原資である。結局、分館誘致は日の目を見ず、福島のエルミタージュ美術館分館は幻に終わった。

 東電が寄付したとされる5億円の行方は不明だ。東電にとって寄付金は原発立地対策の有力な切り札。原発立地自治体への寄付金を差配した元東電担当者はこう証言している。
 「東電は90年前後から2010年まで年度初めに10億から20億円の寄付金の予算枠をとった。必要に応じて増額することも多く、年平均で20億円以上となり、約20年間で総額4百数十億円に達する。金額は県ごとの原発発電量などを目安に配分した」
 カネは「一般寄付」として出されるので東電の名前は出ない。自治体との癒着と批判されるのを避けるためのカモフラージュだ。
 岸田政権は原発再稼働、新設に前のめり。電力会社による原発立地への見返りである寄付金は継続され膨れ上がるだろう。電気料金が原資であることを利用者は忘れてはダメだ。
 
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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