2023年07月14日
【新聞労連シンポ】言論機関の言論の自由を考える 寄稿やSNS発信に不当な干渉目立つ 講演依頼「断るように」コンプライアンス実は保身=石川昌義(新聞労連中央執行委員長)
新聞労連は6月3日、「言論機関の言論の自由を考える」と題したシンポジウムを東京で開いた=写真=。新聞・通信社で働く組合員が別媒体に寄稿したり、SNSで情報発信したりする内容に会社が不当に干渉する事案が報告されていることを受けて企画した。
会場参加やオンライン視聴の一般市民を含め、約300人が参加した。新聞労連がことし1〜2月に実施し、組合員186人が回答した社外言論に関するアンケートの結果を報告した。社外媒体への執筆や講演を止められたとの回答は12人(6・5%)、会社の肩書を使って個人名で行うSNSで会社から注意を受けたり、停止を求められたりした人は8人(4・3%)いた。
個人で運用するツイッターへの投稿が政治家の反論で「炎上」し、会社が用意したお詫び文を投稿したものの、社からアカウントの削除を求められた―という案件や、従軍慰安婦問題について社外で講演の依頼があったが、社から「断るように」と言われた―という事例など、意見が対立しがちな歴史認識に関する問題や、政治家のネット上での圧力が表面化した場合に、会社側が安易に沈静化を図る意図で社外言論に圧力を加える傾向が浮かび上がった。また、コミュニティーFMへの出演や出身大学のパンフレットなど、本来なら所属企業の存在感を高める機会に対しても差し止め圧力が掛かった事例もあった。
組合員も参加したパネル討論では、新聞労連の役員を務める全国紙の社員が、社側に出した出版申請を拒否された経験を語った。休日に私費を使って会社の肩書を外して取材した結果を基に、原発をテーマにした本を出版する計画を進めていた際に、企画意図を説明する出版社側の申し入れを新聞社が拒否した―という。北海道新聞労組の組合員は、道新で2015年から16年にかけて浮上した社外言論規制の動きに対し、組合員が反対する職場ニュースを発行したり、新聞労連が反対声明を出したりした結果、規制案を押し返した事例を報告した。
パネル討論に参加した元共同通信記者でジャーナリストの青木理さんは、社会部記者だったころに新書「日本の公安警察」を出版した経験を基に「社内に『警察を取材しにくくなる』と反発もあったが、『君のやったことに間違いはない』と応援する編集局幹部もいた。最近はコンプライアンスという名目で保身が先に立っているようだ」と指摘した。TBSキャスターの金平茂紀さんは、記者のSNS発信に積極的な米紙ニューヨーク・タイムズを例に挙げ「社外にどんどん書くことで、記者としてだけでなく、企業としての価値も高まる」と訴えた。道新の社外言論規制の際に反対の論陣を張った梓沢和幸弁護士も登壇した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年6月25日号
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