2023年07月19日

【出版の現場】出版フリー労働者の実態アンケート結果から見えてきたもの 「出版ネッツ」の3カ月に及ぶ調査=萩山 拓(ライター)

 フリーランスのライターや編集者、イラストレーターらが集まるユニオン「出版ネッツ」が主体となって取り組んだ、出版社などに出向いて働くフリーランス(常駐フリー)の実態調査結果が6月半ばに公表された。出版ネッツのホームページにアンケート調査フォームを掲載し、2022年12月16日から23年2月20日までの3カ月間、インターネット調査への回答者は42人。
 ここでいう出版界で働く常駐フリーとは、出版社と業務委託契約や請負契約を結び、出版社に出向いて社員の指示のもとに働き、1 社で1 週間 20 時間以上、または月 80 時間以上就業し1 カ月以上の業務継続が見込まれる人を指す。

「定額働かせ放題」

 集計結果から見えてきた実態は、まず月額固定給の弊害が挙げられる。報酬の形態を尋ねた設問では、「月額固定給・年俸」という回答が最も多かった。月額固定給とは、1 日 8 時間以上働いても報酬額は変わらず、それ以上働いた分は、割増どころか無報酬である。
 これは2018 年頃より、「労働者性の判断基準」にある「報酬の労務対償性があるか否か」を意識して 時給から月額固定給に改変するケースが増えている結果と推測される。「定額働かせ放題」は大きな問題である。
 労働者かどうかを判断するには「労働者性の判断基準」が用いられるが、なかでも「業務遂行上の指揮監督があるか」は、「諾否の自由があるか」「時間的・場所的拘束性があるか」 と並び、重要な判断要素とされている。

新たな判断基準を

 これに対する設問項目として「業務上の指示」についての問いには、「どの仕事をするかを含め、自分の判断で決められる」は5人(11.9%)と少数である。「自分の判断では決められない」が11人(26.2%)。
 また「どの仕事をするかは指示されるが、仕事の進め方などは自分で決められる」「どの仕事をするかは指示されるが、最初にやり方を教えてもらい、あとは自分の判断で進めている」の合計が20人(47.6%)と約半数を占める。  
 こうした実態からみても、社員からの細かい「業務上の指示」がないから「業務遂行上の指揮監督がない」ので、フリーランス(常駐フリー)は労働者でないとみなすのは無理がある。
 これらの実態を踏まえ、出版ネッツは「1985 年に作られた古くて狭い<労働者性の判断基準>に当てはめて判断するのではなく、働き方の実態や仕事の性質を丁寧に見て、その業界の仕事の性質や労働実態にあった<判断基準>を作成するよう求めていくことが必要だと思われる」とまとめている。
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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