同時期に、同一人物を扱った本が2冊刊行された。それだけ対象人物に注目が集まっているのだろう。その人物は泉房穂(前明石市長)。破天荒な政治家として人気を博す一方、2度の暴言でマスメディアの指弾を浴び、自らあっさりと市長の座を降りたという人物だ。この2冊、著者や聞き手の色が、強く出ていて読み比べると面白い。
『暴言市長奮戦記』(世界書院1500円)は、泉の言葉だ けではなく、周辺取材を綿密に行い、社会状況まできちんと書き込んであるので肉付けが厚く、泉の政治的立場や思想も含め理解が行き届く。
幼いころの家庭状況や家族への想いも伝わってきて、一つの物語になっている。東大在学中に学生運動から学んだもの、師事した政治家の言葉も記され読者の胸をうつ。読んでいくと泉は「暴言市長」ではなく「感涙市長」だと分かってくる。
泉の暴言の裏側には、弱者に対する共感の涙があるのだ。それがすぐに感情的になる泉という政治家の真情なのだ。
『政治はケンカだ!』(講談社1800円)は極 めて丁寧なインタビュー集。聞き手は元朝日新聞・政治記者の鮫島浩氏で、質問の内容も「闘いの日々」「議会論」「政党論」「役所論」「宗教・業界団体論」「マスコミ論」「リーダ ーシップ論」と、広範な内容におよび、かなり政治的な突っこみが展開されている。
特にマスコミ批判は鋭い。新聞の凋落を二人で嘆いているのも面白い。市役所内の権力争いや、労組や宗教団体との絡みも赤裸々に語り、「ケンカ市長」の面目躍如である。ページのそこここから肉声が聞こえてきて、その場に立ち会っているようだ。
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