2023年08月09日

【経済】大軍拡やめ社会保障拡充へ 経済打開の道は最賃上げ、非正規禁止を=山家悠紀夫(やんべ・ゆきお=暮らしと経済研究室主宰・元神戸大学大学院教授) 

                     
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 私が編集部から与えられた課題は「円安、物価高騰、賃金追い付かず、これでは暮らしは一段と困窮し国力の大幅ダウン必至。負のスパイラルは大きくなる一方。打開策はないのか。」というものである。
 現状認識についてはそのとおりである。統計を見ると、2022年度の実質賃金は前年度比マイナス1・8%であった。多くの人が生活レベルを1・8%落とさないと暮らして行けないという状況である。生活意識を見ても現在の生活を「苦しい」と感じている世帯が53%と、全世帯の半数を上回っている。

苦境の理由は二つ

 打開策はないのか。ある。
 国民生活が苦境に陥っている大きな理由は二つある。一つは、政府が「財政危機」を口実に、年金制度の改悪、生活保護費の削減、医療費の自己負担割合の拡大等、福祉に使う政府資金を削り続けてきたことである。二つは、政府が国際競争力の強化を目指す「構造改革政策」の下で、日本の経済社会の構造を大きく変えてしまったことである。
 この2点を改善することにより、日本の経済社会を今少しましなものにできるはずである。具体的には、@政府の資金を福祉その他人々の暮らしを良くする方向に使うこと、A経済社会全体の仕組みを国際競争力重視から働く人の生活重視へと切り替えていくこと、である。

 まず資金面については、社会保障予算の大幅拡充を図ることが必要である。その財源はある。岸田内閣の大軍拡政策を直ちに中止すればいいのである。
 岸田内閣は23年度について日本の軍事費の対GDP比率を従来の1%からNATO(北大西洋条約機構)並みの2%へと引き上げていく方向を示し、軍事予算を大幅に増額させた。今後ともこの路線で巨額の軍事予算を組んでいく方針だという。
 しかし日本は、NATOに加盟しているわけではないから軍事費の対GDP比率を2%に引き上げる義務はない。ここは、平和憲法下にある日本として、「それはできない」と断るべきであった。軍事予算を拡大から縮小へと方向転換することによって、相当額の予算が浮いてくる。その浮いた額を福祉政策等に充て、国民生活の改善に向けることができる。

自公政策の転換

 次に経済社会の構造については、企業の国際競争力を強化するという政策に代えて、人々の生活を大切にするという方向へと、変えていくことである。(ちなみに日本経済は30年近く停滞を続けているが、これは輸出不振のためではなく、低賃金で国内消費が伸びないためである。)

 具体的には低賃金・いつでも解雇できる非正規雇用者を使って安い(国際競争力の強い)製品を作るという企業の方針をやめさせ、働く人の暮らしを大切にしながら物を作っていく仕組みを作る(最低賃金の大幅引き上げ、非正規雇用の原則禁止、同一労働同一賃金の徹底等)ことである。
 岸田内閣下ではその転換はとてもできない、というのなら、岸田内閣を変えていくことが必要である。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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