2023年08月14日
【神奈川支部例会】横浜港で進む戦争準備 物流拠点の揚力艇増強=保坂義久
JCJ神奈川支部は7月9日、横浜市・西区のかながわ県民センターで支部総会と例会=写真=を開いた。例会のテーマは「横浜港で進む戦争準備 ノースドックへ米部隊配備」。ピースデポ理事の木元茂夫さんが、横浜港の瑞穂ふ頭にある米軍の物流拠点・ノースドックについて、歴史的な流れと揚陸艇配備などの新たな動きを解説した。
「戦車闘争」
戦中には高射砲陣地があった瑞穂ふ頭は、終戦後、横浜港の他の施設とともに接収された。朝鮮戦争時には、アメリカを中心とした国連軍の兵站拠点として機能した。
その後、他の港湾施設が返還されるなか米軍施設として残された。
ベトナム戦争末期の1972年には、相模原補給廠で修理した戦闘車両のノースドックへの搬入を阻止する「戦車闘争」が起こった。
戦車の重量が道路法の制限を超過することを問うたこの闘争に、政府は車両制限令を改定して対処した。
小型揚陸艇
そうした歴史的経緯を持つノースドックに、米陸軍のLCU(小型揚陸艇)5隻が2002年8月搬入され、2004年までに32隻にまで増やした。
木元さんは、有事になってから沖縄に物資を運ぶのではなく、事態が少しでも危うくなったら、揚陸艇部隊は沖縄に移動する。LCUは350トンの荷物を運ぶことができるが、速力は11ノットと遅い。あらかじめ沖縄に移動させておき、宮古島や石垣島などと沖縄本島との補給に使うのではないかと指摘した。
港内で訓練
ノースドックは岸壁であり、飛行場ではない。陸揚げされたオスプレイが横田基地まで飛行、横田基地所属のヘリが、ノースドックで飛行訓練したりしている。
今年1月に日米外務防衛相会談で、沖縄駐留の米海兵隊と横浜ノースドックのLCU部隊の再編が提案された。ノースドックに来年までに280人の船舶部隊を置く。280人の兵員は横須賀や座間に宿泊する。
こういう時の常として最初から兵舎を作るなどということはない。ほとぼりが冷めてから計画が出てくるのではと木元さんは推測する。
木元さん自身は「見たことはない」と断ったが、LCUの訓練は横浜港内で平然と行われている。
中国と対決
懸念されるのは海兵隊の再編だ。
アメリカは台湾有事を煽り立てながら計画を推進してきた。第1列島線と呼ばれる島々に遠征前線基地を作り、そこを拠点に作戦行動する。遠征前線基地を維持するためにLCUが必要になる。
今年の始めには米中が激突するシミュレーションが話題を呼んだ。アメリカは空母を2隻、艦艇は百数十隻、航空機も数百機失うとの結果がでた。
木元さんはアメリカがそこまでの犠牲を払わないだろうとするが、原子力空母2隻が沈没した場合の放射能汚染の深刻さは計り知れない。
さらに木元さんは、自衛隊が海上輸送能力を強化している実態にも触れ、将来は自衛隊だけでなく海兵隊員や物資を運ぶだろうと指摘した。
最後に昨年9月に米揚陸艦ラシュモアが参加して、沼津海浜訓練場で行った日米共同訓練をウォッチした経過を報告。「政府・与党は『安全保障環境の悪化』というが、悪化させているのは誰か」。双方が軍事行動を抑制することが重要だと強調した。
講演後は36人の参加者から質問を受け付けた。「興味のない人にどう伝えればいいか」との質問に答える中で、木元さんは「人々の関心を牽くのはリアリズム」と語り、映像の力を強調した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
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