2023年09月29日

【月刊ンマスコミ評・新聞】「歴史修正主義」の原点を感じる=白垣詔男

 関東大震災から100年の9月1日、新聞各紙の社説は、この問題を取り上げた。今年は、震災問題に加え、森達也監督の映画「福田村事件」が話題を呼んでいる。
 朝日は「朝鮮人に関するデマを載せる新聞もあった。社会主義者らが殺傷される事件もあった」「映画『福田村事件』の森達也監督は、状況によって『普通の人、善良な人が悪を犯す。誰でもその要素がある』と話している」と書いた。自戒も含めた文章だろうと解釈したい。
 さらに朝日は、物理学者で随筆家の寺田寅彦の著作「天災と国防」の一文にある「災害に対する警告に対して『当局は目前の政務に追われ、国民はその日の生活にせわしくて、そうした忠言に耳をかす暇(いとま)がなかったように見える』と書いている」と国民はデマを信じる余裕がなかったと伝えている。

  同じような「自戒」はネットが発達した現在のほうがデマの拡散は容易になっているとして毎日「不確かな情報に踊らされることがあってはならない」、西日本「その情報が正しいかどうか。…日頃から、少しでも見極める力を養っておくことが大事だ」と自らも襟を正している。
 しかし、当時、警察官僚だった正力松太郎が「デマ拡散」に関係したとされている読売と、産経は、「朝鮮人虐殺の負の歴史」には全く触れていない。ネット全盛の現代、デマによる大衆行動への警告もない。2社の社説を読む限り、「歴史修正主義」の原点を感じる。
 また、松野官房長官が8月31日と9月1日の記者会見で「関東大震災時の朝鮮人ら虐殺」について、「政府内において事実関係を把握する記録は見当たらない」と他人事のような発言を繰り返したことについて、厳しく批判する新聞は見当たらなかった。この発言を報じなかった新聞もあった。

  松野発言に関して共同通信は1日付で韓国、北朝鮮の反応を送信。韓国では、「最大野党『共に民主党』国会議員らがソウルで記者会見をし『日本政府の責任逃れと韓国政府の無関心』を批判した」と報じた。また「北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞が、朝鮮人虐殺を非難する長文の記事を掲載し『受難の過去を決して忘れず、千年の宿敵である日本と決着をつけるしかない』と呼びかけた」と伝えた。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年9月25日号

posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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