2023年09月30日

【映画の鏡】これが日本の現実だ『国葬の日』リベラルに欠けた視点を提示=鈴木賀津彦

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              「国葬の日」制作委員会

 これが日本の現実だと分かりやすく提示していることに、とても共感した。賛否が分かれ「世論が二分」された中で国葬が執り行われたと伝えるマスメディアの評価に、現実との乖離を感じていた私にとって、大島新(あらた)監督が捉えた全国各地の人々の本音は、とてもリアルに受け止めることができた。
 2022年9月27日、安倍晋三元首相の国葬が行われた日の日本の姿を、全国10都市でカメラをまわし、人々のリアルな思いを取材している。ドキュメンタリーというと何か制作者の主張が声高に盛り込まれているイメージを抱く向きもあるが、この作品は国葬という日の現実を誇張なく記録した映画なので、観た人の多くがモヤモヤ感を持つかもしれない。

 それが制作の狙いなのだろう。大島監督は「初めて完成版を見た時、私は本当に困惑した」と語り、そして「この困惑を、映画を観た人と分かち合いたい」と、様々な受け止め方、意見のぶつかり合いに期待を込める。
 大島監督には、国葬に反対する「リベラル勢力」の現状認識に欠けている視点への危機感があるのだろう。よく議論される例に置き換えると、「投票率が上がれば」「もっと若者が投票に行けば」変革が起きると期待がよく述べられる。しかし現状のままでは、投票率が上がれば上がるほど、若者が投票へ行けば行くほど、現政権与党がますます大勝するのが現実かもしれない。あるべき論にしがみつかずに、現実をリアルに捉えること、その重要性を浮かび上がらせてくれた作品だ。
 この現実から、絶望するのか、希望を見出すのかも、観た人に任される。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年9月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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