10年で激減の読書量
文科省が2022年に行った「21世紀出生児縦断調査」の結果内容を公開した。これは少子化対策を企画立案するため、2001年度から始めた調査だ。すなわち2001年に生まれた特定の子供に対し、毎年多岐にわたる質問をして、その後の変化を調べている。今回は21歳になる約2万2千人分の回答を分析した。
その質問の一つとして、「この1カ月に読んだ紙の書籍(本)の数」を尋ねたところ、なんと「0冊」が62.3%、「1冊」は19.7%、「2〜3冊」が12.3%、「4冊以上」は5.8%だった。電子書籍(本)の数を尋ねても「0冊」が78.1%を占めた。
同じ特定の子供が10歳の時には「1カ月に0冊」は10.3%(保護者からの回答を集計)だった実態と比べて、10年の間に読書量が大きく落ち込んでいるのが顕著になっている。本を読まないだけでなく新聞を読みテレビをみる若者もかなり減っているという。
「読書離れ」深く考える
背景には何があるのだろう。交流サイト(SNS)や動画投稿サイトの普及が一因と指摘されている。その一方で若者たちの社会参画の機会が増え、読書以外に目が向くようになったというポジティブな要因も考慮すべきだろう。
21歳という時点に限っての結果だけで、若者の「読書離れ」を論ずる危惧も指摘されている。10歳から21歳、さらには30歳へと成長していく過程で、人生にも変化が起き、図書館の充実・文化施設の拡充などの社会環境の変化と合わせ、一人ひとりに訪れる転機や機会を得て「読書」に戻ることもある。
こうした視野を踏まえての議論が必要になっているのではと思う。この6月に刊行された飯田一史『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)は、この20年間でV字回復した小中学生の読書力を考察し、21歳以降の若者たちへ示唆に富む提言をしている。読書を通じZ世代のカルチャーにも迫る。参考になる一冊だ。
2023年10月20日
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