2023年10月24日

【好書耕読】読者に問う「幸せの法則」=小林美希(ジャーナリスト)

 「やりたいことは次々と出てきてきりがないけれど……、うん。やり残したことはない」
 2011年に47歳で他界した夫が残した言葉をきっかけに、著者は心理学やキャリア理論を探求。そのなかでたどり着いた「幸せの法則」について読者に問いかけ、語りかける。困難な場面に直面した時、Labor(仕事)、Love(愛)、Leisure(余暇)、Learning(学び・自己成長)の「4L」が大切だと解く。 

 著者は、有名な裁判の当事者だった。亡き夫から継承した会社で女性社員からマタハラで訴えられた。当時マタハラ問題は時流に乗っており、各メディアは女性を取材して次々に報道。やがて社名を検索すれば「ブラック」「マタハラ」がついて回るようになった。女性が勝った一審判決は各社が大々的に報道。会社側の言い分は掲載されないに等しかった。

 二審に進む中で和解の提案が出たが、著者は「和解すれば、してもいないマタハラを認めることになる」と拒否した。二審で女性側の虚偽問題が判明。「原告がマスコミ関係者に事実と異なることを伝え、会社がマタハラ企業であるとの印象を与えようと企図した」として会社側が逆転勝訴。最高裁も同判決を支持したが、逆転判決の報道はトーンダウン。マスコミの報道姿勢が問われた。

 多くは企業の立場が強く寄り添うべき弱者は労働者になるが、判決が逆転したという時、記者は徹底的な取材で真実に迫らなければならない。書いたことの誤りは取材が足りないということ。失敗を認めなければならない。

 著書では裁判について触れていないが、「今、自分ができることを精一杯やる」「やり残したことはないと思える人生にする」などの言葉に、逆風のあった裁判で妥協せず闘った姿が重なる。それを記者として読み取り、日頃の報道姿勢を振り返ってほしい一冊だ。(日本実業出版社1650円) 
     
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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