2023年11月11日
【23年度JCJ賞受賞者スピーチ】大賞 自民党の統一教会汚染 孤独な戦いで癒着暴く ジャーナリスト・鈴木エイトさん
これだけ重大な問題をなぜメディアは追及しないのか。そう感じながら、いつか世に問うためにと報われない努力を続けてきました。安倍晋三元首相が銃撃される不幸な事件をきっかけに、メディアもようやく気づきました。
事件後、メディアに画像、動画、音声データなどをオープンソースとして提供してきたのは、それを一緒に追ってほしかったからです。健全なジャーナリズムの復権につながったと思います。
僕がメーンに寄稿していたウェブメディアは一昨年5月に閉鎖され、ノンフィクションの賞に応募しても最終選考には残らず、出版社に企画を持ち込んでもなかなか通らない。そこに起きたのが安倍元首相による関連団体へのビデオメッセージで、一番驚いたのは、映像が公開されても、安倍氏が自分の政治生命や自民党の選挙に影響はないだろうとタカをくくったことでした。映像は宗教二世には衝撃で、山上徹也被告にはものすごい絶望があったと思います。
彼のツイッターで、僕の記事を全部読んでいたことが後でわかり、安倍氏を狙った彼の動機を僕の記事が担保したのではないか。その事実に直面して、激しく落ち込みました。とすれば彼の今後の裁判で、正しい情報、適切な情報を適示することが僕なりの責任の取り方です。
ビデオメッセージは銃撃事件の最後のトリガーとなりましたが、そうなった責任の一端はメディアにもあると思います。2000年代中頃まではメディアも、統一教会と政治家の関係を報じました。その後、訴訟リスクや面倒なクレームを恐れて報道がなくなった。自主規制でしょう。教団側は鈴木エイト排除だけに集中すればよく、統一教会と政治家の癒着がより深まった。事件はそんな中で起きました。
21年前、統一教会による街頭での偽装勧誘の阻止活動を始めて以来、教団と政治家の関係をずっと追及してきました。これがもっと早く世に問えていれば、安倍元首相暗殺も山上被告が犯罪者になることも防げたかもしれません。
統一教会の問題では、社会に可視化されていない問題がまだ多い。声をあげられない被害者にスポットを当てていきたいと思います。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
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