2023年11月12日
【23年度JCJ賞受賞者スピーチ】南西諸島の防衛力問う 再び沖縄を戦場にせず 琉球新報社 池田哲平さん
連載の企画を練り始めたのは昨年秋、沖縄県庁記者クラブと東京報道部、宮古、石垣の支局員らが進めました。23年1月3日付から「自衛隊南西シフトを問う」の題で4月までに30回掲載し、「追う南西防衛強化」のワッペンを付け一般記事でも報じました。
自衛隊の南西配備強化は2010年代の初めから、与那国町への配備や宮古、石垣島への部隊配備へと進みました。
昨年末の安保関連3文書の決定で、日本の安全保障政策は大転換し、昨年春から在京紙、大手メディア含めてスクープ合戦が繰り広げられました。そこでは政府発表に追従し、発表内容がそのままニュースで流れるところがあったかなと感じています。
当時、自衛隊配備について沖縄県民が感じたのは、地域コミュニティ変容への不安でした。賛否で2分してしまう。なぜ自衛隊が沖縄に必要かという根本的な問いにも目が向けられていませんでした。
私たちは沖縄の県紙として、政府の国防政策を見つめ直そうと企画を始めました。「台湾有事」の危険性についても、政府説明と住民が感じている、実際に島で起きていることのズレを意識しました。
与那国島では、沿岸監視部隊との説明で(自衛隊配備を)容認した元町長を取り上げました。元町長は(南西シフトによる)さらなる部隊配置と、米軍が初めて訓練で島に入ることに強い危機感をもっていました。自衛隊配備の強化で、沖縄が標的になる懸念もすごく高まっています。起きて欲しくはないですが、有事の時に本当に住民は逃げることができるのかなどの問題にもアプローチしました。
沖縄には米軍専用施設の7割が集中し、今後は自衛隊の負担まで背負っていくことになります。私たちは新年1月1日付で防衛省のシンクタンク、防衛研究所が21年度に中国との戦闘を想定した研究を取りまとめていたことを報じました(過去の沖縄戦と同じ「持久戦」の再現だと琉球新報は社説で批判)。私たち沖縄の記者は「2度と沖縄を戦場にしない」ことをしっかりと掲げていくことが大切だと思っています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
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