2023年11月24日

【23年度受賞者スピーチ】命(ぬち)ぬ水 映し出された沖縄50年 「調査」にも地位協定の壁 琉球朝日放送=島袋 夏子さん

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  番組は2016年、沖縄県企業局が川や地下水からの有害な化学物質・PFAS(有機フッ素化合物)検出を公表したことをきっかけに、共同ディレクターのイギリス人ジャーナリスト・ジョン・ミッチェルさんと私、又吉謙カメラマンの三人で取材しました。
 沖縄県民が飲む「水」の水源は、地下水を蓄える13kmにも及ぶ石灰岩質の帯水層です。その水が米軍基地のPFASによって汚染された。このことからタイトルを「命ぬ水」(命の水)としました。
 県民は自分たちが命をつなぐ「水」が基地の地下に溜まっていることをほとんど知りませんでしたが、帯水層の水は私たち先祖代々の命を守ってきました。

 帯水層は沖縄戦の時に県民が命を守るために逃げ込んだガマに繋がっています。沖縄戦の時、17歳で「鉄血勤皇隊」だった私の父の話にもガマの話が沢山出てきました。ガマの中でどうして生きて行けたのかというと奥に水があったからです。

 水の問題は基地問題の社会的構造を浮き彫りにしました。基地は上流にあり、下流に住む県民はその水を知らないまま飲まされてしまう。基地問題の構図、上流と下流の話なのだということに気づきました。
 沖縄県は2020年、嘉手納基地周辺の川や地下水の水をできるだけ使わない方針を固めました。一昨日(9月21日)、嘉手納町の比謝川取水ポンプ場を見に行きました。水をここから取っていませんと県の方から説明され、汚染がどれだけ沖縄社会に影響を及ぼしているかを実感しました。

 沖縄はこのPFAS汚染問題で社会インフラが大きく変わりました。これは沖縄の環境史、公害史に刻まれる事件だと思います。
 共同ディレクターのジョン・ミッチェルさんとは土壌汚染取材から始まった13年来の仲間です。ジョンさんが米の「情報自由法」で資料を入手し、内部告発者から文書を取ってくる。沖縄の記者の私は現場取材や裏取りをし、歴史的な文脈から資料を読み解く。そうした役割分担で取材を続けてきました。

 私たちの前には地位協定の壁があり、立ち入り調査ができずにいますし、この問題の根本的解決には多くの障害があります。琉球朝日放送は番組をYouTubeで全部公開し、英語版で国際社会に訴えています。皆さんとつながり問題解決に取り組みたいと思います
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 23年度JCJ賞受賞者スピーチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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