2023年11月27日
【23年度JCJ賞記念講演】悪化進む貧困状況 中高年から若年層へ 女性の困窮も深刻化 雨宮処凛さん語る
2006年、フリーター労組のメーデーデモで聞いた「生きさせろ!」の叫びから貧困問題にかかわり17年。当時、1600万人だった非正規雇用は、いまでは2100万人です。
07年に反貧困ネットワークが結成され翌年暮れの年越し派遣村に505人が来ましたが、うち女性は5人。コロナ1年目の職を失った人の相談会では344人の相談者の2割近い64人が女性でした。
今は相談者の3割がネットカフェなどにいます。派遣村の時は中高年の男性が多かったが、いまは男女ともに若い人たちが増えました。
コロナ禍で激増
3年前立ち上げた「新型コロナ災害緊急アクション」という恒久的なネットワークにはこれまでに2000件くらいのSOSが来ました。いまも来ています。
相談者は10代から30代が6割です。派遣村の時と違い、今はホームレス化がカジュアルになって、家が無くてもあせらない。あせるのは携帯が止められた時。携帯が無いと仕事も探せません。
電話がきて「こちらに来てください」といっても電車賃がない。駆けつけてお金を渡し、近くの安いホテルを探してから、区役所に生活保護申請をすることになります。
都内での炊き出しや食品配布でも、コロナ前は50〜60人でした。それがコロナでどんどん増えて、今年5月には750人ぐらいが並びました。コロナ前は、近隣の中高年のホームレス状態の人が並んでいたが、今は子連れのお母さんや若いカップルとか様々な人が来ます。コロナ後はずっと600人ぐらいの人が来ています。
命をつなぐ携帯
携帯が止まっている人には2年間、無料で携帯を貸し出しています。でも、それは一部の人だけ。今は不動産の契約も固定電話より携帯の番号を求められる。一度携帯が止まると元に戻れない。
生活保護を受けても、パートを始めるにも携帯が無いと不動産を契約できない。すると携帯を持ちたくても、住所がない持てない。同じところをぐるぐる回っている。
今の日本では経済危機や災害、感染症流行など何かあると家を奪われるなど生活が破壊される人が一定数いて、どんどん増えています。
貧困報道の貧困
この10数年の貧困報道は、表面に現れたものがブームになり、それが消費されて終るという感じをうけます。17年も現場にいると、取材に来る人も代わっていく。もちろん継続的に取材をしている人もいるし、新人を連れてきて一から教えるような人もいますが、一般的に継続されていない。貧困報道がどんどん「貧困」になっている気がします。
今はこの社会は間違っているから変えようという正面突破と、こんな社会は間違っているから自分たちで勝手にやろうという二本立てでやっていきたいと考えています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号
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