2023年12月22日

【寄稿】杉尾秀哉参院議員 ネット使い組織ぐるみの世論操作 Dappi裁判 一審で確定 会社の業務と認定 自民党との関係には触れず

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         参院予算委で追及する杉尾議員

  匿名のツイッターアカウント「Dappi」の投稿で名誉を傷つけられたとして、小西洋之参議院議員と私が、東京都内のIT関連企業「ワンズクエスト」社の社長らに損害賠償を求めた裁判で、被告に賠償を命じた東京地裁の一審判決が先日、確定した。

 ネット上の誹謗中傷や名誉棄損事案が後を絶たない中で、ネットを使った組織ぐるみの世論操作と見られる実態の一端が、今回の裁判で明らかにされた意義は極めて大きい。
 その一方で、裁判では一貫して被告側が投稿者の開示を拒み続けたため、実際の投稿者や、投稿の背景と目的などは一切明らかにされなかった。また、メディア等で指摘されていた、被告会社と自民党との関係についても、判決では全く触れられなかった。 その意味では、課題が
多かった裁判と言わざるを得ない。
 
 ここで簡単に裁判の経緯を振り返りたい。 Dappiは2019年6月開設。ネット番組や国会中継の動画を切り取り、野党や報道機関を批判する一方、与党議員の発言を評価する投稿を繰り返していた。フォロワー数は17万人にのぼり、自民党議員らがリツイート等で拡散していたことを考えると、影響はさらに大きい。

 そのDappiが我々を標的に問題の投稿をしたのは、20年10月のこと。全くの事実無根で、到底看過できる内容ではなく、党幹部の助言もあって小西議員と私は提訴を決断した。そこからIPアドレスと契約者情報の2段階の開示手続きを経て、Dappiアカウントの所有者がワンズクエスト社と判明。21年10月に、会社と小林社長らを相手取り訴訟を提起した。

裁判所命令も拒否
投稿情報ひた隠し

 この裁判で小林社長は、投稿が従業員による私的なものと認め、当該従業員を減給処分した給与明細を提出する一方、「会社の業務とは無関係だ」と主張し、裁判所の命令に反して投稿者の開示を拒否し続けた。
 そして迎えた本年10月16日。東京地裁は会社側に計220万円の賠償と、投稿の削除を命じる判決を言い渡した。この間、最初の訴訟提起から実に2年半の歳月を要していた。

 この判決で東京地裁は・投稿が平日の午前9時から午後10時の間に集中していたこと・また、投稿時間や内容等から、投稿者は業務時間の大半を専ら記事の投稿に充てていたと認められる―などとして、問題の投稿は「小林社長の指示の下、従業員あるいは社長自身により、会社の業務として行われた」と明確に認定した。内容は我々の全面勝訴と言えるもので、当然被告側は控訴するものとばかり思っていた。ところが、控訴期限の10月30日になっても手続きは取られず、そのまま判決は確定した。

ワンズ社と自民党
「調査不用」と首相

 では、なぜ被告側は控訴しなかったのか?そこで改めてクローズアップされるのが、ワンズクエスト社と自民党の関係である。政治資金収支報告書や企業情報、報道機関の取材などによれば、(1)ワンズクエスト社は、自民党東京都連や小渕選対委員長ら複数の自民党政治家側から、「サーバ代」などの名目で多額の報酬を得ていたこと。(2)ワンズクエスト社の主要取引先に、自民党の「ダミー会社」とされる「システム収納センター」という会社があり、この会社には自民党本部から毎年4000万円もの分担金が支払われていたこと。(3)さらに、この会社の元役員で、自民党の金庫番と言われる事務方トップの元宿仁事務総長が、小林社長と親戚関係にあることなどが判明している。

 これらの事実関係から私は判決直後に「本件投稿を始めとした一連の野党攻撃が、自民党によるネット操作の一環ではないかとの指摘が出ており、その疑いは排除出来ない」とのコメントを発表した。

黒幕を隠すために
控訴せず幕引きか

 10月31日の参院予算委で私は、システム収納センターの元代表取締役でもある岸田総理に、ワンズクエスト社とシステム収納センターとの取引内容や、金銭供与等の事実関係を調査する気がないか質問したが、岸田総理の答弁は以下のような素っ気ないものだった。
「報道を見る限り、判決では自民党とDappiとの関係については一切触れられていない。調査の必要があるとは考えていない」。岸田総理の答弁は想定の範囲内だったが、それでも疑惑は一切晴れない。
 そもそも、被告側が控訴もせず敗訴判決を確定させたのは、賠償金を払ってでも裁判を早期に集結させたかった。つまり、一連の投稿の「黒幕」を何としても隠したかったと見なさざるをえない。

 昨年の法改正で、契約者情報の開示手続きは簡略化されたが、それでもなお裁判には時間と金がかかる。しかも、本件のように民事訴訟では真相解明に限界があるのも事実だ。
 ネットを使った世論操作に政権与党が関与しているとすれば事態は極めて深刻であり、自民党には徹底調査を求めたい。また、それと同時に、政治家へのネガティブキャンペーンに対しては、名誉毀損以外の規制のあり方を検討する必要があるかもしれない。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年11月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 寄稿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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