パレスチナのガザ地区を実行支配しているイスラム組織ハマスがイスラエルへの大規模攻撃を仕掛けた。イスラエル軍報道官が「米同時多発テロと真珠湾攻撃を合せたような衝撃だ」と述べたというから、その怒りが如何ばかりか想像に難くない。
イスラエルは直ちに反撃をはじめた。ネタニヤフ同国首相の「ハマス絶滅戦争だ」という言葉どおりイスラエルの攻撃はパレスチナ全体を絶滅させるような激しさだ。バイデン米大統領は「まさに悪の所業だ」とハマスを断罪し、ブリンケン国防長官をイスラエルに送った。「イスラエルの自衛権に対するアメリカの揺るぎない支持を明確に示す」ために。
市民を殺害したり、人質として連れ去ったりしたハマスの暴挙が、無論許されることではないだろう。しかし世界大戦後突然やってきてパレスチナ人の生活空間に突然入り込んで以降、イスラエルは何をやってきたのか。ホロコーストの怨念をパレスチナ人に向けてはらし続けてきたのではないか。
米欧を中心にハマスの暴挙を非難して止まなかった国際世論はしかし、急速にイスラエル批判に転じつつあるようだ。子供だろうが病人だろうがハマス抹殺のためには殺害するというイスラエルの「戦争」は許せないとの声が大勢を占めつつありその批判はバイデン米政権にも向けられている。同大統領はネタニヤフ首相を訪ねて、「その勇気と決意と勇敢さは驚くべきもの」と称賛し、イスラエル支援継続を鮮明にしているからだ。
ウクライナに侵攻したロシアに対しては厳しく断罪し、パレスチナに侵攻しているイスラエルは支援するなど米国の二重基準も問題になっている。
インド、トルコなどが疑義を申し立て、共同声明を出せなかったマルタでの第3回ウクライナ和平会議がその象徴だ。」
米国内でのイスラエル、米政権批判は、政権、否米国にとってもっと深刻だろう。イスラエル建国以来、米国内のユダヤ社会は米国政治の重要な要素だが、1996年設立の「平和を求めるユダヤ人の声」という、米国内に70組織、会員約44万人の運動体が「パレスチナのジェノサイド止めろ」と声を上げているという。国務省の高級役人が政府のイスラエル政策を批判して辞職したという話題もある。バイデンに投票したイスラム教徒は当然のことに次回選挙では別の投票行動をするだろう。
国内的にも国際的にも米政府は信用を失い、国内の分裂は深刻になりつつある。このような国とピッタリと寄り添う日本の選択はそろそろ変えなくてはなるまい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年11月25日号
2023年12月25日
この記事へのトラックバック