2024年01月14日

【経済】迷走の岸田経済政策 増税とバラマキ 国民の将来不安増す借金頼み=志田義寧

  岸田内閣の支持率が急落している。報道各社の世論調査で支持率は軒並み「危険水域」とされる20%台に低下、政権の維持に黄色信号がともっている。なぜこのような状況に陥ったのか。このような状況に陥っ大きな要因のひとつは岸田政権の経済政策の迷走を振り返った。

評判悪い経済政策
 11月29日、一般会計の歳出総額が13兆1992億円にのぼる2023年度補正予算が参院本会議で可決、成立した。政府の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の裏付けとなる予算で、物価高対応として、住民税が非課税の低所得世帯に対する7万円の給付やガソリン・電気・ガス料金の負担軽減措置が盛り込まれた。一見すると国民受けしそうな政策が並ぶが、評判は極めて悪い。読売新聞が11月17〜19日に実施した世論調査では経済対策を「評価しない」とした回答は66%にのぼった。今回の補正予算には含まれない4万円の定額減税についても61%が「評価しない」と回答している。減税がこれほど評価されないのも珍しい。

バラマキに不信感
 岸田首相は参院予算委員会で経済対策について「国民の理解が広がっていないことは真摯に受け止めなければならない」と語ったが、国民は理解していないわけではない。今回の減税は支持率アップを狙った一時的なバラマキであることを分かっているから、ノーを突きつけていると見るのが自然だ。この先、防衛力強化や少子化対策の負担増が控えている。
 朝日新聞は補正予算について「水膨れした歳出規模も個々の中身も疑問だらけのうえ、財源の7割が借金頼み」(11月30日付社説)と痛烈に批判。日本経済新聞も経済政策について「迷走の産物という印象が強い。国民の将来不安はむしろ増すばかりではないか」(11月3日付社説)と疑問を投げかけている。筆者も同じ意見だ。この状況で、なぜバラマキ型の経済政策が必要なのか理解に苦しむ。しかも給付金ではなく実施まで時間がかかる減税。岸田首相は「増税メガネ」と揶揄されているが、それを払拭しようとしたと見られても仕方がない。

儒教ギャップ回復
 日銀や内閣府の試算によると、2023年4―6月の需給ギャップはほぼゼロまで回復した。これが意味することは、日本はすでに極端な需要不足の状況にはないということだ。
 経済政策は、@経済の実力を上げる「成長政策」、A実力を発揮できるようにする「安定化政策」、B格差是正を目指す「再分配政策」―の3つに分けられる。当然ながら成長政策と安定化政策の中身は異なる。新型コロナウイルス蔓延時は、需要不足に対応するために、金融政策や財政政策などの安定化政策を強化する必要があったが、現在はすでにそのステージにはない。この状況で補正予算に盛り込まれた国土強靭化を推し進めれば、人手不足等でより物価を押し上げる方向に働く。また、ガソリン等に対する補助金も、市場メカニズムを通じた資源配分を歪める政策であり、弊害が大きい。

空振り続きの政策
 日本はこれまで、安定化政策や再分配政策を重視して、成長政策を疎かにしてきた。この結果がドル換算による名目GDP(国内総生産)の4位転落だ。もちろん、円安による目減りもあるが、成長政策が空振り続きだった影響も大きい。
 以前も書いたが、筆者には忘れられない講演がある。ソフトバンクグループの孫正義社長が2018年に都内で行った講演だ。孫社長は日本でライドシェアサービスが禁止されていることについて「こんなばかな国がいまだにあることが、僕には信じられない」と政府の対応を批判。「国が未来の進化を自分で止めている」と現状を嘆いた。ライドシェアについては、ここにきてようやく議論が前進しているが、この程度の改革すらまともにできない日本が没落するのは当然だ。

野放図許されない
 日銀による長短金利操作(イールドカーブ・コントロ―ル)の見直しで今後は「金利のある世界」に戻っていく。もはや借金頼みの野放図な財政運営は許されない。
 しかし、コロナ後は財政規律意識が麻痺する中、予備費の乱用や政策効果が不透明な政策が目立つようになってきた。その最たるものが今回のバラマキの型経済政策と「異次元」とは言えない少子化対策だろう。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
    
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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