2024年01月19日

【焦点】トランプがパレスチナ切り捨てを強化 大統領に再選ならその姿勢強める?=橋詰雅博

 イスラエルの56年に及ぶパレスチナ占領に対して、アメリカはどういう姿勢なのか。1967年の第三次中東戦争でアラブ諸国に勝ったイスラエルはヨルダンン川西岸とガザ、エジプト領シナイ半島などを武力占領した。そこで国連安保理はイスラエルの占領地からの撤退を決議(「242号議」)。安保理メンバーのアメリカもこの決議に賛成している。イスラエルはすぐに応じなかったが、後にシナイ半島だけはエジプトに返還した。

 242号議を維持してきたアメリカだったが、状況が大きく変わったのはトランプが大統領になってからだ。トランプ政権(2017年から21年)はイスラエルの占領承認と難民保護政策から撤退し、パレスチナ切り捨て姿勢を強化した。日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会の昨年末の学習会でオンライン講演した中東問題研究家の平井文子氏はトランプが4年間で行った政策転換を以下のようにまとめている。
・17年12月6日:イスラエルによるエルサレム首都宣言を支持。
・18年1月16日:国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金凍結。それまでは米国はUNRWAの予算の3割を支援。パレスチナには学校700、診療所140があり、UNRWAは難民にとって命綱だ。
・18年5月14日:米大使館をテルアビブからエルサレムに移転。
    8月31日:米、UNRWAから脱退。
    9月10日:ワシントンにあるパレスチナ自治政府代表部閉鎖。
・19年3月:シリア領ゴラン高原のイスラエルの主権を承認。
11月18日:ポンペオ国務長官がヨルダン川西岸のユダヤ人入植地は国際法に違反していないという見解を示した。
・20年1月28日中東和平案(「世紀のディール」)発表:イスラエルがヨルダン川西岸の占領地に建設した入植地の大部分をイスラエルの正当な領土であると認めた。
    8月13日:アブラハム合意発表:米国が仲介したイスラエルとアラブ首長国連邦和平合意。続いてバーレーンを皮切りにスーダン、モロッコがイスラエルとの関係正常化に踏み出した。
 
 この背景にあるのは米国におけるキリスト教シオニズム運動だ。平井氏こう解説した。
「全米クリスチャンの4分の1を占めるキリスト教福音派はイスラエル国家の創設と数百万人のユダヤ人の集住を、イエス復活が間近であるという聖書の予言の実現とみている。米国におけるキリスト教シオニズムは今や白人福音派の間では多数派神学となっている。シオニズムの票は数千万にものぼり、大統領選挙では大きな票田となっている」
 このため歴代の米大統領はイスラエル支持を維持している。
 トランプが大統領に再選したら、パレスチナ切り捨てをさらに強め中東情勢は一段と混迷を深める。
  
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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