アフガニスタンやパレスチナで起きている人道危機。ニュースでは知っていても、それが世界地図のどのあたりで起きているのか分からない、という若者もいる。彼らに関心を持ってもらうのに必要なのは、「具体的な話」だ。
本書は、北海道パレスチナ医療奉仕団の団員として、アフガニスタンやパレスチナで、人道支援を続けてきた法学者と医師による対話集である。
両人とも学術的バックグラウンドを持つ“行動の人”だ。過去の支援活動においてガザ地区の病院で手術をしていたら停電になり、看護師たちがスマホの灯りをかざして手元を照らしてくれた、といった猫塚医師の話にリアリティを感じない人はいないだろう。
こういった生々しい話が続いたあと、ふたりは日本国憲法が持つ先駆性について語る。とくにその前文に、日本国民のみならず全世界の国民が、「平和のうちに生存する権利を有する」と謳われていることの意義だ。
清末教授は言う。「私たちの活動は国境を越えた活動に見えるでしょう。それは間違いではありませんが、同じレベルで足元の日本の社会での平和的生存権の実現をめざすことが肝要です。足元を見ずに、国境を越えて活動はできません。」
さらにふたりは、先住民族アイヌが住む土地を収奪して成り立った歴史を持つ北海道の団体が、イスラエルに植民地化されたパレスチナにかかわる意義にも触れる。実は私も北海道パレスチナ医療奉仕団のメンバーである。まだ現地を訪れたことはないのだが、事態が少しでも落ち着いたら必ず医療支援に出かけたい。(あけび書房1600円)
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