記者をめざす学生向け23年JCJジャーナリスト講座を10月から6回シリーズで開いた。後半2回を報告する。
「想定外」が糧になる
11月19日は共同通信科学部の寺田佳代記者が災害・事故報道などについてオンラインで講演した。
2018年春の入社で岡山支局に赴任。7月に西日本豪雨に遭遇した。犠牲者が305人に及ぶ「平成最悪の水害」だった。避難所で話を聞いてよいか迷いながらも、倉敷市真備町の老人ホームから避難してきた高齢者を取材し、記事にした。
3カ月後、偶然ホームの関係者と会った。「あの共同通信の記事を書いたのはあなただったんだ。おかげで全国から支援が届いた」と感謝された。全国発信したかいがあった。
事故などの遺族取材では9割超の人が応じてくれない印象だ。だが「心のドア」をノックしないとわからないことがある。「残る1割の人の話を聞きたい」と寺田さん。中国自動車道で起きたスペアタイヤの落下事故で娘と妻を亡くした男性は、事故から2年たった19年に「今でも覚えてくれているとは思わなかった」と言って話をしてくれた。現在も花を贈ったり、電話をもらったりと交流は続いている。
子育て世代にネット配信
東京新聞にはネットで発信する子育て世代向けサイト「東京すくすく」がある。2018年秋に発足し、5年間で5000本の記事を出してきた。同サイト編集長の今川綾音記者が11月27日、オンラインでその狙いを話した。
母親が第1子を出産すると生活は激変する。自由時間が消え、乳児の世話で疲弊し、新聞も読めない。この子育て世代にこそニュースを届けるべきだと今川さんは考えた。自身の育児体験から、スマホで手元に送れば、子をおんぶしながらも記事が読めるはず。それが「東京すくすく」に結実した。
手ごたえはあった。記事を読んでのコメントが1日で500件を超えることも。この5年で最も反響のあった記事は「ぐずる子どもに手を上げて自己嫌悪……そんなあなたに『たたかない子育て』3つのヒント」。コメント数は623件になった。読み手との双方向性を大事にし、親の不安や心配に応える内容をつくってきた。子どもと一緒に映画をみる会、子が泣いても、騒いでもいいコンサートなどイベントも開くようになった。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
2024年02月08日
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