2024年02月11日

【月刊マスコミ評・新聞】災害多発時代に発想の転換を=山田明

 年初から能登半島で巨大地震が発生し、甚大な被害をもたらした。災害列島日本で、災害多発時代を実感させる。震源に近い志賀原発にも危険が迫った。巨大地震災害の全容はいまだ不明だが、厳冬の地で災害関連死が危惧される。官民一体の迅速な支援が求められる。
 巨大地震の翌日には、羽田空港滑走路で衝突炎上事故が起こった。原因の徹底究明が必要だ。羽田空港の混雑は世界3位で、超過密のなかの大事故である。この事故からも学ぶことは多い。

 今年の元日社説は毎日「二つの戦争と世界」、日経「分断回避に対話の努力を続けよう」のように、戦争と平和に焦点が当たる。日本の現実はどうか。政治を揺さぶるのが、自民党派閥の政治資金パーティをめぐる裏金疑惑である。安倍派だけでなく、自民党全体の「構造汚職」と言える。岸田首相の年頭記者会見からは、「政治とカネ」の問題に正面から取り組む覚悟に見えなかった(毎日5日)。

 岸田政権は超低支持率ながら、大軍拡と強権政治を進めている。昨年末、沖縄県知事の権限を奪う前例のない代執行を強行。「苦難の歴史を歩み、過重な基地負担を押し付けられてきた沖縄で、この国の民主主義が揺らいでいる」(朝日12月29日)。一方、読売は「沖縄県知事は司法の判断に背いて、手続きを拒んでいる以上、国が前例のない法的手段に踏み切るのはやむを得ない」(12月27日)と主張。読売は日本学術会議についても「これ以上、結論の先延ばしを図ろうとするなら、国のリ―ダ―シップで改革を実行すべきだ」(同23日)と。強権政治にお墨付きを与える読売論調を注視。

 「第2自民党」を公言している日本維新の会にも注意が必要だ。災害に便乗して、緊急事態条項など改憲の旗振り役として危険な役割を演じている。維新が推進してきた大阪万博についても批判が高まる。万博より震災対応を優先せよ、万博中止・延期の声がいちだんと高まるが、維新はあくまで推進の立場だ。
 軟弱地盤の夢洲で開催予定の万博は、底なしの負担増と災害リスクが懸念される。何より万博への関心は低調のままだ。気候危機下の災害多発時代にあって、今こそ発想の転換が求められている。 
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
    
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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