パーティー券裏金事件でまたも問われる「政治とカネ」。岸田文雄首相率いる自民党では、派閥解散すら足並みがそろわない。1月〜2月上旬にメディア各社が実施した世論調査では、自民党に信頼回復は期待できないとの回答が、軒並み7割から8割超に上った。
民意の不信感は、検察の捜査にも向けられている。
安倍派のパーティー券収入の裏金化が「派閥ぐるみ」なのは明らかだった。東京地検は派閥事務所を捜索し、幹部の国会議員も聴取した。だが、政治資金規正法違反で訴追したのは事務方の会計責任者だけ。共謀の証拠が得られないことを理由に、派閥幹部の責任は「不問」とされた。
地検がこの捜査結果を発表した1月19日の直後に朝日新聞が実施した世論調査では、「納得できない」の回答が80%に上った。2週間後の2月初旬の共同通信の調査でも「納得できない」は83%に達した。
捜査を尽くしたのか、検察はろくに説明していない。「法の不備」を言い訳に、与党議員には手心を加えるのか、との疑念が生じるのは当然だ。
気になるのは、東京地検の足元で捜査を追ってきた全国紙に、民意と温度差があることだ。
処分発表の翌1月20日付で全国紙5紙は関連の社説を掲載した。批判の中心が自民党なのはともかく、捜査については「全員を不問に付すのは不公平感が拭えない」(読売)、「多くの国民が結果に納得できないのは当然だ」(日経)との記述が目につく程度だ。
朝日は、還流側の立件を3千万円で線引きしたことには疑問を呈したが、毎日、産経は捜査への疑問の言及は見当たらない。 検察もメディアが監視すべき公権力なのに、その監視機能を果たしていると言えるだろうか。
躊躇なく検察を批判したのは、いくつかの地方紙だ。信濃毎日新聞は「捜査は尽くされたのか」との見出しとともに、疑問を具体的に挙げた。京都新聞は「少なくとも裏金工作を管轄する立場にあった(安倍派の)7議員は起訴し、司法の裁きに委ねるべきではないか」と指摘している。
全国紙は東京で日常的に、検察中枢に密着して取材している。発想が検察と同化、一体化してしまっているのだとしたら危うい。検察の驕りを増長させかねない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
2024年03月02日
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