2024年03月09日

【NHK】能登地震取材で自衛隊支援要請 抗議質問書を提出=小滝 一志

 能登半島地震発生から3日後の1月4日、NHKは総務省に「『令和6年度能登半島地震』に関する支援要請」を文書で提出した。「わが国の報道機関で唯一の指定公共機関としての使命を果たすため」として、「自衛隊等による物資の運搬」「石油など燃料の優先割り当ての登録」「優先車両の登録」「交換用バッテリーの割り当て」を要請した。

 1月9日のNHK経営委員会で能登地震報道の報告をした山内理事が「総務省を通じて自衛隊のヘリコプターによる燃料と人員の輸送を要請しました」と告げたが、この件について経営委員からは何の疑問も出されなかった。
その後の文書提出の経緯説明にも不可解な見解の食い違いがあった。報道によると、総務省の課長補佐は「初めてのことです」「NHKさんから
 一方的に送られてきたものです。これまで災害時に、このような文書を受け取ったことはありません」と答えた。ところが1月17日の記者会見で稲葉NHK会長は「総務省から放送事業者に対して燃料輸送などの要望確認があり、民間放送各社と一緒になって、自衛隊に対して燃料と作業要員の輸送を依頼した」と答えた。双方が市民からの批判を懸念して責任のなすり合いをしているようにも受け取れる食い違いだ。

 NHKが提出した文書は、NHKOB(元金沢放送局記者)によって「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」のMLに怒りを滲ませて紹介された。同会は、2022年末前田前NHK会長の任期終了時、前川喜平氏の推薦運動をしたことで知られる。
元NHK放送記者の投稿を受けてML上では活発な議論が展開された。

「被災者支援に追われている自衛隊に、よくもこのような恥知らずの要請を行えたものだ」「緊急災害時対策の燃料や交換バッテリーなどは、公共放送として常に自前で用意しているべきもので、行政に要請するなど恥ずかしい」
 その結果、災害報道真っ最中の報道現場に配慮して「能登半島地震に関する自衛隊の支援要請について、事実経緯の説明を求める」との質問書を提出することを決めた。質問は、NHKが「『わが国の報道機関で唯一の指定公共機関』などと名乗り、自ら放送の自主自律をかなぐり捨てるような文書はどのような経緯で生まれ、提出されたのか」「提出文書は総務局長、技術局長名だが、稲葉会長、井上副会長以下の執行部の責任を問う」など、4項目にまとめた。

 質問書は、全国でNHKやメディアの問題に取り組む14市民団体の賛同を得て1月24日に提出された。1月31日、NHKからの回答が届いたが内容は1月17日会長記者会見の繰り返しで提出した質問にはゼロ回答だった。
「放送の自主・自立」「権力からの独立」に無自覚なNHK経営委員会、執行部に対し、視聴者・市民の監視がいかに必要かを改めて痛感する一件だった。

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | NHK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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