政府は2月7日、経済、技術分野にも秘密保護の「適正評価」(セキュリティ・クリアランス=SC)制度を広げ、秘密保護法の適用対象を拡大して民間事業者も含めることを柱とする改正案を示し自民党部会も了承した。
秘密保護法は2014年、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野について「特定秘密」を規定し、公務員などの「秘密の取り扱い者」を指定して安全保障に著しい支障を与える(情報)漏えいを防ぐとして成立した。実施状況は、毎年報告されるが、常に表現の自由やプライバシーとの兼ね合いについて問題を抱えてもいる。今回の政府の動きに対し日弁連は1月18日、「反対」の意見書を提出した。
研究者や企業を統制
今回の改正案では、4分野の「特定秘密」に加えて、「重要経済安保情報」として宇宙やAI、インフラ関連などの「サイバー」「規制制度」「調査・分析・研究開発」4分野で、政府が指定秘密を拡大、民間にもSC制度の調査対象を大幅に広げる仕組みとなった。
秘密の中身も従来の「機密」や「極秘」に、ごく普通の「コンフィデンシャル」と呼ばれる「秘」まで対象とし、5年の拘禁刑に相当する罰則の対象分野も新設する。
急速な経済を含めた軍事化を進める岸田政権が,研究開発を国際協力で進めようとする研究者や企業を一層締め付け、国家管理する根拠つくりになりかねない問題法案でもある。
「ツワネ原則」を守れ
秘密保護法は制定当初から、国民の知る権利や人権保護と安全保障を両立させるための法制が議論されてきた。国際的には2013年5月、南アフリカのツワネに集まった国際連合、米州機構、欧州安全保障協力機構(OSCE)や70カ国、500人を超える安全保障、国際法の専門家がつくった「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)がある。
A4版11nにのぼる日弁連の反対意見書は、「ツワネ原則に即し、知る権利とプライバシー権が侵害されない国民的な議論を経た制度的保障」を求め、@政府の違法な行為を秘密指定してはならないと規定すること、A公共の利害に関わる事項を明らかにしたジャーナリストや市民が刑事責任を問われることがないこと、B適正な秘密指定がされているかをチェックする政府から真に独立した機構を作ること、C一旦秘密に指定した事項が期間の経過などで公開される仕組みを作ることを挙げた。
意見書はさらに、@人権保障に関わる関連法が改正されようとしている、A官産学協共同の情報統制が進むことになりかねない、B秘密保護法の根本的な欠陥は残されたままである――と指摘。
特定秘密の対象を明確にし、公共の利益に関する情報の流布で、個人が処罰されないようにすることなどを挙げ、国連自由権規約委員会の指摘を守るよう求めた。また、「秘密指定の要件があいまい」「公務員だけでなくジャーナリストや市民も,独立教唆、凶暴、扇動の段階から処罰されかねない」など、日弁連が指摘してきた問題点を正すよう改めて求めた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年2月25日号
2024年03月15日
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