◆今村翔吾さん都内にシェア型書店を
直木賞作家の今村翔吾さんが、2021年7月に設立し代表取締役を務める書店経営会社の「京国」(大津市)は、4月27日、東京・千代田区神田神保町にシェア型書店「ほんまる」を出店する。
同店では個人のみならず法人も本棚をシェアし、独自に選書した本をディスプレイして販売できる。さらに書店開業を目指す人々に向けセミナーや講演を行い、融資などの資金面も含めてサポートする。将来的には全国展開も目指す。
この「シェア型書店」とは、「貸し本棚屋」「棚貸し書店」とも呼ばれている。30センチ四方ほどの本棚を個別に貸し出し、その賃貸料で主な収益を得る。借り受けた側は、独自の仕入れや選書でユニークな書店空間を作り、本を売る新しい書店の仕組みとして注目され、各地での出店が続いている。
◆自治体が支援「本の町づくり」
いま青森県の八戸市が「本の町」として脚光を浴びている。その拠点となるのが、市が運営する「八戸ブックセンター」=写真=である。今から7年前、2016年12月4日、市民が気楽に出かけていって、素敵な本や好奇心をそそる本が買え、かつ何か知的刺激が得られる場所として誕生した。
この「八戸ブックセンター」では、本の販売やイベントの開催はもちろん、提案したテーマに沿う本を陳列、また閲覧スペースも提供する。さらに八戸市内の民間書店や図書館、市民活動などと連携しながら、「本のまち八戸ブックフェス」を年に1回開催している。
自治体が運営する本屋の先例は、北海道・礼文島の「BOOK愛ランドれぶん」がある。ここは本屋と図書館が一体になった、礼文町の町営施設である。稚内からフェリーで1時間40分もかかる離島では、町営本屋をつくる必然性があり納得がいく(「好書好日」3/16より)。
だが八戸は新幹線も通り、本が入手しづらい地域とは言えない。自治体が図書館に関わるのは理解できても、本屋を運営するのは異色だ。
そこには2021年まで4期16年、市長を務めた小林眞さんの「本のまち八戸」推進構想があった。八戸市全ての本屋と共同し、大人から子どもまで、それぞれに魅力のある本を並べ、知的好奇心を刺激し遊べる文化空間にしていく、青写真が描かれていた。
「利益追求」がさきに立つのではなく、ここにきて本の楽しさ、本がもたらす出会いの魅力を共有する。そして10年、20年先を見据えた「本のまち八戸」づくりの壮大なビジョンへと発展させる、その構想にエールを送りたい。
◆「MUJIN書店」24時間営業へ
トーハンは東京・板橋区のメディアライン大山店で、有人営業と無人営業を組み合わせた24時間営業を開始する。トーハン系列の書店に、Nebraskaが開発した「MUJIN書店」の導入を促進し新業態の開発に向け、同社との協業を強めている。昨年3月には山下書店世田谷店(東京・世田谷区)、同11月にはメディアライン曙橋店(東京・新宿区)に導入している。
各店ともキャッシュレス・セルフレジによる無人化と24時間営業化により夜間と早朝の売上げが増加、収益の改善効果が顕著になっている。
◆書店の倒産10年間で764社
東京商工リサーチが、この3月10日に発表したリポートによると、書店は、2014年から2023年までの10年間で764社が倒産もしくは廃業で消えている。負債1000万円以上の書店倒産は10年間で140社に及ぶ。
コロナ禍では資金繰り支援や巣ごもり需要もあって、倒産は減少に転じたが、今や支援が縮小したうえ、「コロナ特需」が一巡した2023年は、一気に13社が倒産・廃業しその数は約3倍に急増した。
「電子書籍が浸透し、書店の存在が揺らいでいる。店舗で目当ての本を探す楽しみや、知らない本との出会いも、書店の減少で失われつつある。書店の復活には『待ちの営業』から客足を向かせる創意工夫への転換と同時に、国や出版社の継続的な支援が必要だ」と指摘されている。
2024年03月26日
この記事へのトラックバック