2024年03月27日

【焦点】台湾有事「基本的にはない」中台統一なら一国両制で 台沖そっくりな立ち位置 大西広氏がオンライン講演=橋詰雅博

 1月の台湾総統選で勝利した民進党の頼清徳氏が5月に新総統に就任する。中国とは距離を置く民進党政権は葬英文前総統の8年を含め12年続く。台湾統一を掲げる中国の習近平国家主席はどう動くのか。JCJと日本AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)連帯委員会が共催した3月2日のオンライン講演で台湾選挙を取材してきた慶応大学・京都大学名誉教授の大西広氏=写真=が米中対立の狭間で揺れ動く台湾の状況や「中台統一」などを語った。
                     
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 最大の関心事である中国と台湾の戦争の有無について「基本的にはない」という大西氏は「中国の何十ページにも及ぶ長い台湾政策の最後の一行に『統一』が書いてあるだけです。『武力行使も辞さず』と日本のマスコミは報じているが、中国はやりたくない。台湾を武力統一した後、うまくいかないは誰の目にもハッキリしている」と言い切った。
 とはいえ中国が一方的に軍縮したら、台湾は独立に走る可能性がある。日米をけん制するためにも軍縮はできない。台湾が独立宣言した場合、平和的統一は放棄するだろう。

カギを握る民衆党

 総統選と同時に投開票が実施された立法院(一院制で国会議員の定数113人)選挙では、与党・民進党も最大野党の国民党も過半数に届かず、第3政党の民衆党が8議席を獲得。結局、民衆党が議会でキャスティングボードを握る。そこまで議席を伸ばすことができたのは若者の支持を得たからだ。外交はひとまず置き、内政に的を絞った。選挙権を18歳に引き下げる、後の世代に負担を回す国債増発反対など若者向け政策やSNSを駆使した選挙戦が受けた。「20から30代の票数410万のうち233万を民衆党が獲得した。若者や社会的な弱者を裏切れないポジションに達した。未知数という評価もあるが、期待できると楽観視している」というのが大西氏の見立て。また原住民(先住民を指す)にも6議席の枠を設けている台湾の民主主義は十分に機能していると分析した。
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1月13日の投開票前日の民進党大規模集会、香港の民主派の旗「時代革命」やウクライナ国旗もみられた

50年日本が支配
 台湾は大陸に沖縄は日本本土に「不信感」を持っている点で「台沖」は似ていると指摘した。
「沖縄は第二次大戦で本土の盾として米軍と戦い多大な犠牲者を出したにもかかわらず米軍基地を押し付けられ我慢を強いられている。好き勝手な本土と見ている。台湾は1895年に切り捨てられた(日清戦争で戦況が不利になった清国は台湾の日本割譲を認め、その後50年間日本は植民地支配した)。いまさら中国の一部という主張は好き勝手な言い分と見る。台沖は立ち位置がそっくりです」(大西氏)
 良心的な中国人と知り合いが多いという大西氏は「そういう人でも日本に蹂躙されたのは軍事力が弱かったので平和のため自国の軍事力の強化は欠かせないと言います。反論はできないですよ、日本人は」と日本の罪状に言及した。

福建省軍撤退を

 中国による台湾統治は1980年代提案した「一国両制」が基本だとする大西氏はさらに2つ提案した。「中国は台湾海峡に面する福建省の軍隊を大幅に撤退させる」「台湾を外交権持つ特別自治区とし、国連にも加盟させる。ただし独自の軍隊は保持させない」。
 こういう形で「中台統一」が実現できればいいが……。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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